雑記帳 二〇二四年 睦月 如月 弥生 卯月 皐月 水無月 文月 葉月 長月 神在月 霜月 極月
二〇二三年 睦月 如月 弥生 卯月 皐月 水無月 文月 葉月 長月 神在月 霜月 極月
二〇二二年 睦月 如月 弥生 卯月 皐月 水無月 文月 葉月 長月 神在月 霜月 極月
二〇二一年 睦月 如月 弥生 卯月 皐月 水無月 文月 葉月 長月 神在月 霜月 極月
二〇二〇年 睦月 如月 弥生 卯月 皐月 水無月 文月 葉月 長月 神在月 霜月 極月
二〇十九年 睦月 如月 弥生 卯月 皐月 水無月 文月 葉月 長月 神在月 霜月 極月
二〇十八年 睦月 如月 弥生 卯月 皐月 水無月 文月 葉月 長月 神在月 霜月 極月
二〇十七年 睦月 如月 弥生 卯月 皐月 水無月 文月 葉月 長月 神在月 霜月 極月
二〇十六年 睦月 如月 弥生 卯月 皐月 水無月 文月 葉月 長月 神在月 霜月 極月
二〇十五年 睦月 如月 弥生 卯月 皐月 水無月 文月 葉月 長月 神在月 霜月 極月
二〇十四年 睦月 如月 弥生 卯月 皐月 水無月 文月 葉月 長月 神在月 霜月 極月
二〇十三年 睦月 如月 弥生 卯月 皐月 水無月 文月 葉月 長月 神在月 霜月 極月
二〇十二年 睦月 如月 弥生 卯月 皐月 水無月 文月 葉月 長月 神在月 霜月 極月
二〇十一年 睦月 如月 弥生 卯月 皐月 水無月 文月 葉月 長月 神在月 霜月 極月
二〇一〇年 睦月 如月 弥生 卯月 皐月 水無月 文月 葉月 長月 神在月 霜月 極月
二〇〇九年 睦月 如月 弥生 卯月 皐月 水無月 文月 葉月 長月 神在月 霜月 極月
二〇〇八年 睦月 如月 弥生 卯月 皐月 水無月 文月 葉月 長月 神在月 霜月 極月
二〇〇七年 睦月 如月 弥生 卯月 皐月 水無月 文月 葉月 長月 神在月 霜月 極月
二〇〇六年 睦月 如月 弥生 卯月 皐月 水無月 文月 葉月 長月 神在月 霜月 極月
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橘井堂二〇十九年水無月二十四日

ここのところ移動が多かった!!
先月、広島ロケを終えてから、小泉八雲の朗読で北海道へ。
一般公開ではないけれど、「第11回 日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会」での上演。
ここ数年、循環器など、医学会からお声がかかることが続いているような・・・?
出雲、山陰の地と医術は、オオクニヌシや因幡の白兎の神話でつながっているからかな?
我々の語り、音楽が、心身の癒しになっていただければ、これ以上のことはないと思ってはおりますが。
10月にはアメリカツアーも控えているし、ますます磨きをかけたい「小泉八雲 朗読のしらべ」です。

整形外科学会の講演はホテルでしたが、せっかく札幌に行くのだからと、相方、山本恭司のホームグラウンドとでもいうべきライブハウス「HOT TIME」でのステージも!!
それぞれ出し物が違い、整形外科学会では「松江叙景」と題して、松江や山陰の怪談などを中心に構成したもの。
HOT TIMEでは「転生」を。
「転生」は、「勝五郎再生記」という前世の記憶を持った子供の話や、情愛深い「おしどり」、「振袖火事」「お貞の話」など。
13年も続けてると、レパートリーも増え、聴いてるだけで小泉八雲作品通になれるかもです!!??
ライブハウスならではの音響の良さや臨場感、一方、整形外科学会の、普段ライブハウスとはご縁のなさそうな先生方(失礼!!)も、かなり集中して聴いてくださっていたのがひしひしと伝わりました。
外国人の方も40名ほどいらっしゃいましたが、スタンディングオベイションしてくださり、嬉しかったなあ〜。
英語字幕も出していたからでしたが、こちらは、ギリシャやアイルランドでのツアーで、字幕でも、しっかり映画のようにご覧いただけることは経験済みなので、自信を持ってお届けすることができました。
HOT TIMEは、キョージがいつもやってるお客さん交えてのアフターパーティーも開催!!
ファンの方々を大切にするキョージの姿勢には脱帽!!でした。
直接感想を聞けるのも貴重ですし、楽しかったな♬

北海道から帰って、翌日は故郷、松江へ。
時間はかかるけど、新幹線と岡山乗り換えで伯備線で松江まで。
前々から決まっていた、島根大学附属中学校の同窓会!!
還暦の時にやって以来でしたが、みんな元気だったな。
定年になって悠々自適の方もいれば、まだまだ現役で教壇に立つセンセイも。
大好きだったケイコちゃんと会えて、デレデレでした^^”
バンドで、グループ・サウンズ歌ったり、二次会、三次会と流れ、地元のこれからのことを真剣に語り合いもしました。
六十代半ば、亡くなった旧友のことも同窓会の度に聞くのは寂しいですが、だからこそ、生きているうちに、できることを悔いなくやろうと誓い合う同級生たちなのでした。

翌日は、福岡へ!!
飛行機も出雲〜福岡便があるのですが、実は、列車は、移動中に色々仕事もできるので、時間はかかっても一日、有意義に過ごせるんです。
駅弁も楽しみだし・・・あれ?それが本心かな?

ホテルにチェックインして、アクロス福岡シンフォニーホールへ。
アクロス・ランチタイムコンサートvol.72《スペシャル版》「室内楽防衛隊 vs 特撮音楽大進撃」のリハーサル。
先月は、札幌文化芸術劇場にて札幌交響楽団と「ゴジラ1954」のシネマコンサート「ゴジラ vs 札響〜伊福部昭の世界〜」で、ギターの演奏部分に8小節だけ参加させていただきましたが、今回はその曲のフルバージョンも含めて3曲参加させていただきました。
・・・というか、編曲の和田薫さんからの無茶振り!!
バンドやってるからコード譜は読めるけど、五線譜のオタマジャクシは小学校の時、バイオリンで挫折して以来ムリ!!
なので、札幌での小泉八雲の朗読の時には既に渡されていたスコアを、キョージに見てもらい(なんてったって、音楽学校のセンセイだ!!)教えてもらったり、
リハーサルに早めに行って、譜面の音符とギターのポジションを探りながら、バイオリンの塩貝みつるさんから教えてもらったり・・・。
ちなみに塩貝みつるさん、元ハンブルグ国立フィルハーモニー管弦楽団アソシエイト・コンサートミストレスという、えら〜いお方!!
コンサートマスターはNHK交響楽団の第一コンサートマスター、マロさんこと、塩崎史紀さんだったし!!
エライコッチャ!!
僕は、ゴジラの船員の曲と、モスラメドレー(モスラの歌〜聖なる泉〜美人双子姉妹の歌)、そして特撮大行進(怪獣大戦争マーチ〜ゴジラvsモスラマーチ〜ゴジラvsメカゴジラマーチ)に参加。
ゴジラや特撮映画でファンになった伊福部昭さんの譜面は、とにかく変拍子だらけ!!
ロックンロールのように、身体で覚えているリズムだけじゃ対応できない!!!
でも、伊福部さんの音楽は、深いところで身体に染み付いているから、本番では譜面を必死に追いかけつつも楽しんでいる自分がおりました。

それにしても、一流の演奏家たちはスゴイ!!
リハーサルでの楽曲の作り方、息の合わせ方、強弱、楽曲の解釈・・・マロさんやみなさん、意見を出し合って、作るんですが、その空気は優れた演出家や監督のダメ出しとまるっきり一緒!!
なので、今回は、管弦楽団のギタリストの役・・・と理解し、演じ終えることができました。
良いもの味わっちゃうと、ヤバイな〜♬

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★整形外科学会はこんな雰囲気。


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★ライブハウスはこんな感じ。


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★アフタートークで演奏したり。


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★唄ったり。


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★ホテルでのパフォーマンスは、照明もちと違う。


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★小泉凡さんの講演もあるし。


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★打ち上げはジンギスカン!!


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★「ゴジラvs札響」の時は「だるま」、今回も美味しかった!!


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★林海象監督オススメの「東海道新幹線弁当」、確かにお得!!


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★岡山乗り換えで「たこ飯」、伯備線「特急やくも」は車内販売はありませんのでお気をつけください。


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★駅弁、キリがないぜ!!


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★福岡、リハーサルは和田薫さん指揮のもと。


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★札幌に続いてご一緒のマルチリード奏者、福井健太さん、コンバスは時津りかさん、ホルンは山下真知子さん。


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★パーカッション関家真一郎さん!!︎


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★バイオリン、マロさん、塩貝みつるさん。


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★本番!! ビオラ/山下典道さん、セロ/原田哲男さん、ピアノ/田中美江さん、トランペット/阿部一樹さん、トロンボーン/村岡敦志さん


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★打ち上げでごま鯖、絶品でした!!

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橘井堂二〇十九年水無月九日

映画「おかあさんの被爆ピアノ」の撮影は終わったけれど、なんだか濃い日々が続いてます。

立教大学での講演「乱歩と戦争」では、細井尚子教授にお相手していただきながら、江戸川乱歩、少年探偵団シリーズとの出会いから、シリーズ一作目の「怪人二十面相」が書かれた時代背景などのことなどからお話を始めました。
昭和11年(1936)、226事件が起こり、日中戦争、大東亜戦争に突入に向かおうとしていた中だったからこそ、あえて少年向けの小説を書くことで、大人向けの小説では時の政府、軍部に対して批判的だと捉えられてしまうことも、すり抜ける事が出来ると、心の中で企んでいたのかもしれません。
怪人二十面相が、悪党ではあるけれど、人は殺さず、血が嫌いで、現金には興味なく、美しいものを愛する美意識を持った人物として描かれていることもそうなのでしょう。
僕が最初に読んだのは東京オリンピックが開かれた昭和39年(1964)、ポプラ社から刊行され始めたばかりの時でした。 「電人M」を松江の園山書店で父親から買ってもらったのです。
それからハマって、読みまくり!!
でも、その時には少年探偵団シリーズが戦前から書き始められていたものとは知らずにおりました。
まだ、乱歩先生はご存命でしたし。
軍部を批判したとして発禁になった「芋虫」を始めとして、戦中は全作品が発禁となってしまった乱歩でしたが、そんな中、戦意高揚小説「偉大なる夢」が書かれていた事。
スパイを扱った日本人の精神の気高さ、素晴らしさ、実直さ、勤勉さを謳った作品でしたが、明智小五郎と怪人二十面相の物語のどんでん返しの数々、「屋根裏の散歩者」や「陰獣」のミスリード、罠の数々の仕掛けを考えると、この「戦意高揚小説」という前提自体がトリックだった・・・という風にも読めてしまうので、「やるな!!さすが乱歩!!」と唸らされてしまうのでした。
などなど、「過去に描かれた現在」という時間を想像しながら、現在進行形の「今」を眺めると、この先に待ち受けている未来もまた、あるべき姿の未来の「現在」としてはっきりと見通す事ができるのかもしれません。
乱歩邸、蔵も見学できたし、ドップリ乱歩世界に浸りました。
記念館はリニューアルして何年かのちには、もっと見やすくなりそう。
展示や企画展などもいろいろできるだろうし、今から楽しみです!!

翌日は林海象監督「夢みるように眠りたい」のクラウドファウンディングによるデジタルリマスター版の試写会。
出資してくださった方々を五反田のイマジカにお招きしての試写会&打ち上げ。
こんなにも深く、この映画を愛してくださっている方がいらっしゃるのかと、目頭が熱くなりました。
フイルムの質感は、素晴らしいのですが、上映の度に劣化して行くので、最初の美しさからはどんどん変わっていってしまいます。
なので、今回は、限りなく最初の状態に近いものにしようというのが狙い。
デジタル技術は、余計なホコリやキズなどを除去できますし、逆に欲しかったものを加えることも可能です。
今回、ちょっとだけ夜空の星を増やしていたり、曲芸の綱渡りのシーンで、実際には俳優は(安保由夫さん!!)綱渡りはできないので、下に箱を置いたりしていたのですが、それは消したりもしています。
でも、それ以外は限りなくオリジナルプリントに近づきました!!
それもこれも、イマジカの技術あればこそ・・・。
ホコリやキズの修復を、職人さんたちが一コマ一コマ丁寧に手作業でやって行くので、デジタルと言いながら、作業は途轍もないアナログ!!!
感服、感謝!!でありました。
林海象監督、主演の佳村萌さん、佐野、撮影の長田勇市さん、長田達也さん、宣伝の堀込多津子さんが試写会に揃いました。
みんな、35年前の撮影当時を振り返りながら、この作品に関われたことの幸せを分かち合う事が出来ました。
観客の皆さんとも、当時の空気を存分に分かち合う事が出来たのではないかと思います。
打ち上げパーティでは、出資してくださった皆さんともお話ができ、みなさん喜んでいただけたようで、本当に嬉しかったです。
この日のためだけに作られたグッズが景品として提供され、ジャンケン大会をして盛り上がりましたしね!!

実は、音声など、もうちょっとだけ調整が必要なので、出資してくださったみなさんにお届けできるのは、少しだけお待ちいただくことになりそうですが、妥協しないその姿勢!!撮影時の35年前と変わらず!!です。
加えて、デジタル化にあたり、若き、新たな技術者たちも加わりましたしね。
「夢みるように眠りたい」よ、いつまでも。

そうそう、「おかあさんの被爆ピアノ」の広島ロケの帰り、尾道に一泊して関東での撮影は残っていましたが、ちょいと一息つく事が出来ましました。 シネマ尾道のみなさんともお食事しながら、打ち合わせもでき、有意義なひと時となりました。
三月の尾道映画祭での尾道散歩、出雲路を探ったり、小津安次郎監督「東京物語」のロケ地巡りをしたり。 シネマ尾道で「東京物語」をフイルム上映した際、トークイベントでお招きいた
だきましたが、劇中でも語られていた住吉祭りの日の上映だったこともあり、ジワリと胸にくるものがありました。
「夢みるように眠りたい」も、シネマ尾道でデジタルリマスター版、いつか上映できたらいいな。

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★立教大学、8101教室。


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★細井尚子先生は、乱歩にはお詳しくないとのことでしたが、だからこそ、まっさらな気持ちで講演のお相手をしていただく事が出来ました。


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★テレビ番組では自粛せざるをえないようなお話ができるのも、生の講演ならでは。 政治家のみなさんは、それで、つい本音が出てしまうのでしょうけれど。 ちなみに、本音は語っても、失言はしておりません^^"


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★乱歩のお孫さんの平井憲太郎さんと、立教大学の学生にして、かつて小学生の時、林海象監督「おじさん公園のひみつ」のシナリオを書いた加藤光さんにも聴講していただけました。


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★久しぶりに「おじさん公園のひみつ」が上映されるそうです。


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★わたしゃ、ブロンズ像役!!よろしければぜひ。


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★デジタルリマスター版「夢みるように眠りたい」の景品グッズ!!


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★左より、照明の長田達也さん、撮影の長田勇市さん、林海象監督、佳村萌さん、佐野。


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★クラウドファンディングに参加してくださったみなさんと。 映画は観ていただいて、初めて命が吹き込まれるのだと、あらためて思いました。


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★広島ロケでは、鞆の浦(とものうら)という美しい港町での撮影もありました。 宮崎駿さんの「崖の上のポニョ」の構想を得た街だそうです。


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★水辺でのシーン、なんだかとってものどかに演じることができたような気がします。


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★尾道の夜、この店は外せません‼︎「ロダン」


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★マスターにSP盤をかけてもらいました。 ベニー・グッドマン🎶


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★この店も外せません‼︎


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★メキシコのお母さんと。お店はなんと!僕と同い年の昭和30年開店‼︎

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橘井堂二〇十九年水無月七日

五藤利弘監督「おかあさんの被爆ピアノ」、全体の撮影はあともう少しだけれど、ひと足お先にオールアップ!!
怒涛の広島ロケを終え、関東ロケも天気に恵まれました。
スタッフもキャストも、すっかり日焼けしてしまいましたが^^”
広島では、お好み焼き屋さんでお好み焼き&ビールしながら広島カープの試合を地元のお客さんたちに混じってテレビ観戦できたのも、忙中閑ありで贅沢でした。
広島弁のセリフに追われていましたが、身も心も、すっかり広島っ子になれたかな???
しかし、強いですね!!??広島カープ!!
お好み焼き屋さんで地元の人と話してたら「球場が新しくなって、カープ女子が増えたんで、選手がエエとこ見せよう思とるんよ」とのことでしたが、説得力あるかも!!??

矢川光則さんの実際の被爆ピアノを使ってのコンサート活動に関わっていらっしゃる音楽家の方々も出演なさっており、矢川さんの全面協力のもと、使用されている小道具やトラックも、全て本物なので、責任の重さを最後まで痛感させられました。
何よりも、原爆投下により亡くなられた方々のことを想うと、芸能が、あらためてあの世、目に見えぬ世界への奉納の儀式なのだと突きつけられるのでした。
広島、長崎、第五福竜丸、福島・・・そのほかにも、実際には目に見えないところで様々な犠牲が出ているのかもしれません。

撮影はけれど、決して順調に撮影が進んだ・・・とは言えないこともありました。
普段なら、映画は監督のものなのだからと、俳優として自分の役割を務めるだけ・・・と職人に徹したい想いも少なからずあるのですが、今回は、大杉漣さんの後任という想いも重なり、妥協せずに監督や共演者の皆様に、想うところは全てぶつけて、その結果がどうなるかは、まだまだわかりませんけれど、最後までもがき続けることができたと信じたいです。
もどかしく想う時、若き頃の撮影現場での監督の声が蘇りました。
五社英雄監督の「佐野さん、自分のことだけ考えなさい!!」
これは、決して、ひとりで勝手にやりなさいということでは、もちろんありません。
自分の身体の状態が、正確に、この場にいて、相手の言葉がちゃんと聞こえているか、反応しているか、そのことを見失わないように、「自分の(身体の状態)ことだけ考えなさい」とおっしゃっていたのだと想うのです。
溝口健二監督で言えば「反射してますか!!??」でしょうか。
若松孝二監督の「台本なんか信用するな!!」
もちろん、台本に書かれてあることが全てですが、そこに綴られている言葉が、セリフであれト書きであれ、目の前にある風景や家屋、相手の状態と、必ずしも・・・いや、むしろ、セリフやト書き、風景が、現場の身体や環境とすんなりと一致することなどほとんどありえない・・・と言っていたように思います。
天気に向かって、自分の思い通りにならないことをぶつけるように。
まあ、黒澤明監督なら、それもできたのでしょうけれど。
自分の思い描いていたことと、目の前に見えるもの、聞こえるものが違う時、どう対処するのか。
見ぬふりをするのか、身体に入ってくる音を排除し、防御して聞かずに強引に思い描いた通りにやり通し、もっともらしく見せるのか・・・考え方はそれぞれでしょうが、事実は事実として受け止めることから始めなければと、現場での葛藤が、自分にとって一番の学びの場となっていたようにも振り返ります。

東京での撮影は、「都立第五福竜丸展示館」にて。
かつて、訪れたことがありましたが、今年四月からリニューアルされ、この国の、世界の、核の歴史、犠牲になった方々のことが、丁寧に展示されていました。
一度は解体されかけていた、かつてはゴミの山だった夢の島に放置されていた第五福竜丸をちゃんと展示している東京都!! 東京オリンピックを控えている今、海外からの観光客の皆さんにも是非見ていただきたいものです。
「広島平和記念資料館」は、修学旅行生らも多かったですが、海外の観光客の方々が本当に数多くいらしていましたから。
第五福竜丸は1954年、一作目の「ゴジラ」制作の引き金となった事件。 先月、札幌で、「ゴジラ」の生演奏上映における札幌交響楽団のみなさんに混じっての、第五福竜丸をモデルとした船上のギターを奏でるシーンの演奏を担当したばかりだったこともあり、展示館での撮影での想いはひとしおでした。
被爆ピアノで、「ゴジラ」の女学生たちの唄うレクイエムの曲が演奏される日が来ることを願っています。

第五福竜丸を前にしての撮影は夕方終わったので、公開中の「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」を観に行きました。
竜蛇神獣の日本神話は、かねてより、もっと古層の世界中の竜蛇伝説と重なるはず!!と思っていたので、2004年の「ゴジラ ファイナル・ウォーズ」の神父役では、ラヴクラフトのクトゥルフ神話を引用して海の太古の邪神、ダゴン召喚の呪文を唱えるという、台本にもない勝手なことをして監督から呆れられておりましたが、今回のハリウッド版ゴジラは、奇しくも、それを証明する形となっていたのはちょいと嬉しかったです。
様々な信仰の違いから生じる争いを超えるには、人智及ばぬ、人類が認識、感知することのできない太古の神々にアクセスするしかないと思っていたので。
ですが、2014年のギャレス・エドワーズ監督、ハリウッド版ゴジラ同様、ゴジラを倒すために第五福竜丸も犠牲となったビキニ環礁沖での水爆投下の表現や、海底に潜むゴジラのエネルギー源の表現など、ゴジラという太古の地球の支配者にこの地球を守ってもらうために必要なものは・・・という表現には首をかしげざるを得ませんでした。けれど、そのように描かれている今回のゴジラの事実は事実。
東宝特撮怪獣映画に対する深い敬意をマイケル・ドハティ監督が捧げていることが嬉しかっただけになおさら。 渡辺謙さんからチラリと漏れ聞いていた今回のゴジラでしたが、広島原爆投下の犠牲者、芹沢猪四郎の父の形見の懐中時計が指す八時十五分、そして初代ゴジラの芹沢博士を投影した日本兵を想わせる表現は、古来からの侵略者が旧支配者を祀る構造とも似て、まるで「古事記」と「日本書紀」の違いのように、大和朝廷とそれまでの列島各地のクニの主のそれぞれの来歴の正当化と重なるかのようです。
こうなりゃ、口伝で伝えていくしかない・・・という、わたしゃ大戸島のじっさまの心境か??????^^”

2014年の時、ハリウッドのワールドプレミアで渡辺謙夫妻とレッドカーペットを歩いたり、東宝の皆さんとアフターパーティーで大いに語り合った次回作のことも懐かしく振り返ります。
僕が力説していた日本版ゴジラは、再度の日米対決「キングコング対ゴジラ」
日本版ゴジラは「シン・ゴジラ」となりましたが、どうやらキンゴジは、アメリカ版となって登場するようですね。 何はともあれ、香山滋原作の「ゴジラ」に戻って、このジイさんは語り伝えていこうと思う、被爆ピアノの現場だったのでした。

最後に、「敗戦後論」で大いなる啓示を与えていただき、ゴジラ論で対談させていただいた、文芸評論家の加藤典洋さんのご冥福を心よりお祈りいたします。

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★夢の島の「都立第五福竜丸展示館」


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★被爆した第五福竜丸のエンジン。


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★エンジンの顔︎


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★大漁旗。


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★第五福竜丸に降ってきた死の灰。


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★第五福竜丸、船首。


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★被爆ピアノで朗読をしてくださったクラーク高校のみなさんと。

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