雑記帳0205

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二〇〇二年皐月三十一日

★「かまいたちの夜」の佐野。そういえば「青い鳥」でもこんなシーンがあったのでは？

伊藤俊人さんの告別式があったこともあって、どこの現場に行っても身体を大事にせねば……との会話ばかりです。

そんななか、バチあたりのように「かまいたちの夜」のクランクアップを迎えました。
吉田秋生ディレクターはクリストファー・リー主演の映画「吸血鬼ドラキュラ」ばりの演出で盛り上げてくださいました。
佐野は役者冥利!!
スタジオ前室でみんなで「マタンゴ」のビデオに見入ったりして、作品に向けて盛り上がっておりました。
リハーサルの帰りに皆で焼肉食べに行ったりね！
浅香唯さんが、生肉、ユッケとレバ刺しばかり皿ごと抱えて食べてたのが怖かった……いや、面白かったデス。
無意識に、ホラーな身体に、全員なっていたようです。

ロケでは長野、白馬のペンション「クヌルプ」にも行きました。
ここは、「かまいたちの夜」のモデルになっているペンションだそうで、実際にここでオフ会も開かれているそうです。
なんか、凄いね、マニアは！

とにかく、楽しい撮影でした！
本当に!!
収録最終日にはスタジオに脚本の伴一彦さんや、原作の我孫子武丸さんも駆けつけてくださいました。
感謝！です。
まずは、ドラマの放送と、ゲーム「かまいたちの夜２」をお楽しみに！

ところで、舞台「春」で組まさせていただいた作・演出の山崎哲さんの新作「また、あした」を新宿のシアター・トップスにマキと観に行きました。
柄本明ｖｓ大久保鷹……あまりにもスリリングなキャスティング！
想えば、28年前、夢の島の紅テント、状況劇場の「唐版・風の又三郎」で観てしまった役者体、大久保鷹に憧れて役者の道を志したことを思い返すと、まったく変わらぬ大久保さんの姿に頭が下がるばかりでした。
芸人にしろ、俳優にしろ、演技云々を口にするのもおこがましい想いをさせられる圧倒的な肉体でした。
とにかく、凄い!!
ストーリーは眼の病に倒れた松竹新喜劇の名優、藤山寛美と相方の掛け合いという、シンプルなものなのですが、劇中劇の構造が好みでした。
何を見ているのか……という、問いかけなのでしょう。
ドラマの現場に出かけて、オシバイをしている自分が恥ずかしくもなり、またそのことと戦わねばならない……と、叱咤された舞台でした。

役者の仕事をさせてもらえていることに、ひたすら感謝！

そして、あらためて、伊藤俊人さんに合掌。

二〇〇二年皐月二十二日

★「かまいたちの夜」の収録現場。

怒涛の日々。
ドラマ「しあわせのシッポ」と「かまいたちの夜」の2本だて収録で、赤坂のＴＢＳと緑山スタジオを行き来してます。
「しあわせ～」がヒューマンな感じで、「かまいたち～」はホラー。
全然違う質感なので、どちらも新鮮！
まあ、ちょいと大変っちゃあ大変なんだけど……。
合間に、秋に創元推理文庫から出るクトゥルー神話の書き下ろしアンソロジー「秘神界」の校正とかもあったんで、だいぶ神経を使いました。
それにしても「かまいたち～」の収録は面白く、メンバーの組み合わせが最高です。
吹き出すのをガマンしながら連日深夜まで収録中です。
北村総一郎さんのトボケタ芝居も、ゲームのキャラクターそのままだし、何より、萩尾みどりさんと浅香唯ちゃんが大のホラー映画ファン（しかもかなりコア）だったことが発覚して、劇中の役柄そのままに、このメンバーが集結したのは当然のことと納得！
松金よね子さんはペンション・オーナーである僕の奥さん役なんだけど、役を真剣に演じていて（当たり前か？）、セットのなかで考えているのを観ているだけでもオカシイんです。
山下容莉枝さんなんかも、みんなのなかではマトモな感じがするんだけど、だからこそ、余計にその真面目さがオカシかったり……みんな演じながら、その複雑なトリックやストーリーに翻弄されて、僕も、なんだか分裂気味。
それだけに、演じながら本当に謎に巻き込まれてしまっていて、これぞまさに「ロール・プレイング・ゲーム」!!
濱田万葉ちゃんのイタイ系の演技や、とても芝居とは思えない田中要次さんや温水洋一さんのオタクぶりにも目が離せません。
ちょっとアンチャンっぽい佇まいが魅力の小橋賢児くんなんかも、ホラーには欠かせぬキャラクターです。
東宝映画の怪奇モノで言えば佐原健二サンや土屋喜男サンといった役どころでしょうか？
そうね、密室劇という意味では「マタンゴ」に通じるものがあるかもしれません。
主演の藤原竜也クンは怪奇俳優の王道の血筋だと思うし（なにしろ舞台で寺山修司や三島由紀夫の作品で主演しているのですから、幻想怪奇俳優の若手として頼もしいかぎりです）、内山理名ちゃんの天然さ加減も、現場にいてさらに怪奇ものにリアリティーを与えています。
フツーの女の子に見えるけど、その中身は絶対にアヤシイに違いない!!
ま、彼女もまた、怪奇ものには欠かせぬ純情な乙女の皮を被った吸血鬼……といったところでしょうか？
……いや、モチロン役のオハナシ。

ところで「秘神界」に書き下ろしたホラー小説は、10年前のＴＢＳのホラースペシャルドラマ、ラヴクラフト原作「インスマスを覆う影」の収録時に実際に起きた怪現象にヒントを得たものなのですが、校正をしていてちょいとヒヤリとしました。
というのは、その内容は、10年ぶりに「インスマス～」のメンバーが集結し、その続編のホラードラマを撮るというものだからなのです。
ええ、まさに現在進行している「かまいたち～」は、10年前の、「インスマスを覆う影」の企画者であるＴＢＳの編成部、那須田淳氏、そしてあの頃「乱歩」で組まさせていただいた演出の吉田秋生氏といったメンバーで、小説はこのドラマのお話をいただく、前に既に書き終えていたもの。
しかも、僕が既に書いていた、「ロケにでかける……」という下りは、ついこのあいだ「かまいたち～」でロケした群馬の山奥、渓谷沿いの光景そのもの！
共時性……シンクロニシティーは必然だとは思うけれど、校正中に、鳥肌がたったことだけは記しておきましょう。

二〇〇二年皐月十四日
	「かまいたちの夜」のロケで、群馬県の富岡におりました。でも、ロケ地は下仁田の渓谷沿いの古い木造校舎の廃校や、谷川温泉界隈の渓谷や森林で、雰囲気はバッチリ！霧のなかの森林を歩いたり、深夜の小学校の木造校舎のなかを廻ったりして、本当にコワイ……。藤原竜也、内山理名、小橋賢児、浅香唯、浜田万葉、温水洋一、松金よね子……そして佐野…といった、アヤシーイ組み合わせ。楽屋では、どうしても心霊話になってしまいます。万葉ちゃんとは1１年前、「先生のお気に入り」という、やはりＴＢＳの連ドラでご一緒させていただいたことがあります。当時はまだ彼女は高校生。僕が担任の先生で、彼女は生徒でね。大路恵美さんや小田茜ちゃん、武田真治クンとか萩原聖人クンとか、なんかいっぱいいたな……あの学校は。またしても月日の経つ速さを感じてしまったオジサンでした。オタノシミはといえば……一日だけ、こんにゃく料理を食べに行きました。ヘルシーで、美味しいお料理に、みんな大喜びでした。あとは……撮影後、飲みながら吉田秋生監督を中心に、ひたすら日本怪奇映画の系譜や吸血鬼映画のレクチャーを若い俳優サンたちにしておりました。ドラマはゲーム「かまいたちの夜」のオフ会に集合したメンバーが殺人事件に巻き込まれる……といった内容なのですが、「オフ会」なんてものが本当にあるのも初めて知りました。世のオタクたちに比べたら、佐野の何と健全なコトヨ！？

二〇〇二年皐月九日
	昨日「かまいたちの夜」の本読み、顔合わせがありました。前日にロケが始まっていたのですが、ともかく、スタートです。ロケは緑山のオープンスタジオの山林で、いきなり藤原竜也クンと雨風まみれのシーン！虐待をテーマにしたヘビーなドラマ「凍りつく夏」以来の共演です。なんか、すっごい背がでかくなっててオドロイタ。オープンスタジオは前日の「筋肉番付」の事故直後のせいか、小雨と気温の低さもあって、何やらおどろおどろしい雰囲気。早くも怪しげな空気に包まれておりました。「筋肉番付」セットも現場検証のために残してありましたし……。まさか、早くも「かまいたち～」の祟りだとは思いたくないけど……。不謹慎な言動は慎まねば……とは、思うのですが、実は、必ず起こるんですよ、怪奇モノの撮影では……。「特命リサーチ」出身のチーフとしては、「根拠のないこと」としたいんですけどね。１０年前にやはり、ラヴクラフトの「インスマスを覆う影」をやった時も、実は色々あって、そのことを題材にフィクションとして、創元社のクトゥルー神話の書き下ろしでも、書いたばかりだったし……。なんか……続いていて……。気を引き締めて取り組みたいと思います。「しあわせのシッポ」とのかけもちなので、その役柄のギャップにも戸惑いそうですが、そこはそこ、イイカゲンな佐野らしく、逆に楽しみたいと思います!! 放送は７月3日。ゲームソフト「かまいたちの夜２」の発売に合わせての放送で、ＤＶＤの発売も決まっているそうです。

二〇〇二年皐月四日

いやあ～昨日は長い一日でした。
「しあわせのシッポ」のロケを早朝から多摩の南大沢駅でやり、その後、都心に戻って夏のＪＩＳ企画の芝居の取材を受け、ＮＨＫに入って、打ち合わせ、リハーサル……そのまま30分間の生放送「本番まで3時間～」に突入！
中川緑アナとの進行やら、生演奏やら……すっかりトッチラカッテしまいました。
ナサケナイ……。
生放送の秒単位の時間割りのやりくりは、想像以上でした。
中川さんは流石で、すっかりその辺はお任せしてしまいましたが……。
スタッフも100人単位で動いてますしね。
舞台裏はてんてこ舞いでした。

★中川緑アナと。

19時半から始まった（ＦＭは19時15分）の「シンガーソングライター夢の名曲集」は、さらに5時間半の生放送！
流石に終わった後は虚脱状態でした。
次々とリクエストは入ってくるし、加藤和彦さんとの電話でのインタビューコーナーはあるし、ゲストに吉田日出子さんはいらっしゃるし……。
でも、新しい情報も色々とお伝えすることが出来て、良かったなあ……と思いました!!
フォーク・クルセダーズの再結成（？）とか……。

昨年の12月に第一弾をやって、今回が二回目。
3回目もありそうです。
進行は苦手だけど、好きな音楽のこと……ニッポンのロック、ポップスの歴史は現在進行形、まだまだ秘蔵ＶＴＲもあるはず！
偏ることなく、お伝えできればなあ……と、これは音楽ファンとしての希望でもあります。

さ、また俳優に戻ろう！
……と、言いつつ、「ゴジラ～」も執筆中デス。
今しばらく、ダヴィンチ再開をお待ちください。

二〇〇二年皐月二日
	五月晴れですねえ～。窓開けて、風が気持ちイイ。今日はっと…「しあわせのシッポ」のスタジオの日。美桜ちゃん、お見合いの巻です。そして、いよいよ明日は、ＮＨＫ－ＢＳ2の生放送！「シンガーソングライター夢の名曲集」、リクエストお待ちしております!! プレ番組の30分では、中川緑アナと演奏もします。「悲しくてやりきれない」を、ピアノとギターの編成で。リハーサルやったんですけど、緑さん、すばらしい美声の持ち主（当たり前か!?）デス。バンドっぽいヨ！シロー＆ミドリもお楽しみに!! 他にも貴重映像満載みたいです。