橘井堂 佐野
2008年9月26日

深浦加奈子さん、市川準監督、追悼
2008年9月24日、亡くなられた、女優、深浦加奈子さんのお別れ会が恵比寿のウエスティンホテルで行われました。
48歳という若さ・・・癌と戦いながら、それでも最期までお仕事を前向きに続けていらっしゃったようで、最後のお仕事となった広島の被爆者の方のドキュメンタリー番組のナレーションが会場に流された時には涙を誘われました。
会場に入りきらないほどたくさんの方がいらしていて、しかも、最後まで皆、別れを惜しんでいて、あらためて人望の厚さを感じさせられました。
小学生の時からの仲良しグループのみなさんの挨拶は、たくさんのエピソードを披露してくださるなか、その、素直な言い回しに笑わされながらも、残念な気持ちが抑えられずにいられなくなりました。
座長の川村毅さんと深浦さんたちが旗揚げした劇団「第三エロチカ」は、佐野も20代、佐野が状況劇場にいた頃からのおつきあいでしたが、僕より少しばかり若かった彼等のエネルギーに負けてはいられないと思っていた事は事実です。
川村氏の弔辞、ご両親、ご家族の凛とした態度、実に清らかな会でありました。
列挙したらきりがないほどの仲間、仕事の関係者がいらしていたので、記すことができませんが、どこかみなさんがひとりひとり、深浦さんと忘れられない想い出を持っていらっしゃるように見えました。

個人的には、まだ佐野が映画でデビューしたばかりの頃、山崎哲さんの転位・21の芝居を観た帰り、語り足りなくて二人で随分と飲んだ覚えがあります。
深浦さんは、劇団や後輩には相当厳しい面もあったようですが、僕の印象では不安や思った事を正直に話してくれるやさしい人・・・でした。
どちらかといえば、甘えん坊・・・といったところもあったようです。

15年も前でしょうか、TBSのドラマで共演した時、顔合わせでリハーサル室に入って来た深浦さんを、旧知の俳優仲間たちが、とても驚いたり喜んだりしたのを観たプロデューサーが目を丸くして「そんなにスゴイ人とは知らず・・・」と言っていたのが忘れられません。
そんなに一緒にお仕事をさせてもらったわけではありませんし、プライベートで会うような間柄でもなかったのですが、広い意味で「アングラ」出身の女優、深浦加奈子を仲間として観、気にしていたのかもしれません。

訃報は続き、今月、市川準監督も9月19日に亡くなられてしまいました。
作品編集中、仕事を終えてから脳内出血で倒れられたとのこと・・・。
59歳・・・若すぎます!!
この世界、確かに身体だけが頼り・・・。
残念でなりません。
市川監督とは、映画でご一緒させていただいたことはありませんが、20年近く前、鶴瓶さんの番組『スジナシ』の先をいっていた『東京日常劇場』というテレビ番組に出演させていただいたことがありました。
設定だけ決まっていて、台詞はすべてアドリブ。僕は石倉三郎さんとご一緒させていただき、交番の巡査の役でした。
内容はよく覚えていませんが、瞬間の生な感覚、現象を逃さないことを心がけていらっしゃった監督だと思います。

クレージーキャッツを再集結させた『会社物語』は、なかでも特筆すべき1本!!!

小津安二郎監督を敬愛なさっていたところも、話の合うところでした。
結局、実現はしませんでしたが、織田作之助の『六白金星』をやろうと、声をかけていただき、あれやこれやと話していたのですが・・・。

久世光彦さんや、市川監督・・・がっぷりと組ませていただきたかった監督が亡くなられてしまうのは、俳優としてももちろん残念なのですが、何より、その世界観を提示してくださる先達、仲間を失ってしまうことが、残念でなりません。

どうか、みなさま、安らかにお眠り下さるよう・・・そして、残された我らを、どうか見守っていてくださいますよう・・・。

合掌。

photo
★「深浦加奈子お別れの会」でいただいた生前の深浦さんの写真。

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