橘井堂 佐野
2025年12月5日

嵐山光三郎さん、ありがとうございました

嵐山光三郎さんの体調がすぐれないことは聞いてはいたけれど、訃報を聞いて、残念でならない。
83歳での他界は、あの、おおらかな人柄からすれば、まだまだお元気でいるだろうと、ついこの間までは思っていたので、何か、心の糸が、プツリと切れてしまったような気持ちさえする。

本名は、祐乗坊英昭さんなので、唐十郎さんはじめ、「ゆうさん」とも呼んでいた。
状況劇場に入る前から、「太陽」や「ドリブ」の編集長として著名ではあったので、もちろん、その存在を知ってはいたけれど、劇団に入ってからの、唐さんの周りにいらっしゃるご意見番のお一人として、その親しみやすいお人柄と共に、劇団員にとっては、どこか親戚のおじさんのような存在だった。
そして、その関係は、劇団を辞めてからも、唐さんの門下生として続いていた。

嵐山さんとはコンビのような、まだ、劇団在籍当時は文芸誌「海」の編集者でもあった村松友視さんと共に、芝居のことや、文学について、また、粋な世界のことについて、さりげなく、けれど、厳しく、容赦なくお話ししてくださっていた。

嵐山さん、若松孝二監督、金子國義さん、種村季弘さん、安保由夫さん、クロちゃん・・・唐さんや状況劇場を廻る先輩たちの存在のなんと大きかったことか・・・
だから、村松さん、四谷シモンさん、篠原勝之さん、麿赤兒さん、不破万作さん、十貫寺梅軒さん、山崎哲さん・・・まだまだ、元気でいてくださいね!!!!

思い出すのは、劇団を辞めて14年も経った頃、唐さんから一人芝居「マラカス」への出演指名があり、劇団時代に果たせなかった役者としての責務を、お返しせねばとの想いで臨んでいた時のこと。
まあ、結局、唐さんの世界を生き抜くことは、ついに出来ずじまいだったように振り返るけれど、それでも嵐山さんが観にきてくださった時、お褒めの言葉をいただけたので、それだけで、やった甲斐があった・・・とは思ったものだった。

クマさん〜篠原勝之さんが「骨風」の小説で泉鏡花賞を受賞なさった時、状況劇場、唐さんゆかりの先輩たちが、久しぶりに授賞式のあった金沢に集い、美酒に酔いしれたことも忘れ難く。

そして、今年4月。
脳梗塞で倒れ、それまで神楽坂で続けていた泉鏡花の朗読会を主催していた桑原茂夫さんを引き継いで、嵐山さんから電話があり、「佐野しかいないから」との言葉もありがたく、泉鏡花の「高野聖」を朗読することに。
なんとか、その朗読会は終えることができたけれど、当日、嵐山さんは体調が悪く、お聞きいただくことはできなかった。

こちらも病を抱える身。
けれど、先達からの指令は、その身がこの世にあろうとあの世であろうと、届けられ、これからも挑み続けなければとの想いでいる。

嵐山さん〜ゆうさん!!
本当にありがとうございました。
あちらでは唐さんや若松監督と共に、さぞ賑やかなことと思います。
またの司令、お待ちしております!!!!

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★嵐山さんと村松さん。


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★ナジャの前で、シモンさん、クマさんと一緒の嵐山さん。。


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★南伸坊さんと。


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★唐さんのお通夜のあと、高円寺、一徳にて。 左から佐野、桑原さん、クマさん、柄本明さん、麿赤兒さん、ゆうさん。

橘井堂