橘井堂 佐野
2000年8月17日



『おやすみなさいの唄』
作詞:佐野史郎 作曲:嶋田久作
そっと目を閉じおやすみなさい
明りを消してあげるから
遠くで聞こえる鈴の音は
あなたをいざなう夢のお供
明日目を覚ましたその時に
きっと聞かせて夢の話
幸せにおやすみなさい


『タイム・スリップ』
作詞・作曲:佐野史郎
古いお屋敷が並んでいる
松の木の葉もきれいに刈られ
もう夏も終わるはずなのに
蝉の声も絶えずに響く

どこからかピアノ練習曲
どこからか子供たちの遊ぶ声

青いもみじの木洩れ陽を抜け
小さいお店でサイダーふたつ
扇風機はカタカタと花瓶を撫ぜて
小さくオーケストラ流れてる

やっぱり夏は終わりそう
空が高い少し眠い



『雷の好きな女』
作詞・作曲:佐野史郎
わたしは雷が好き
台風や嵐も好きだけど
この間街を歩いてたら
ビルの向うにチラリと黒い雲見つけた
息が苦しい 髪をかき上げる

髪がはぜるわ危ない予感
指先にチリリとシグナル
行き来する人気付かない
この街角いつでもそうなの
ネガフィルムの色 生温かな風

その時通りはまるでステージの様に
ストロボの中に浮かんだの
風だってゴオと吹いた

わたしは雷が好き
台風や嵐も好きだけど
こうして電気をまとって
踊り出したい今日もシビレルわ
スパーク スパーク わたしはエレキガール



『第二理科室』
作詞:佐野史郎 作曲:嶋田久作
乾いた体が浮かんでく
風が吹いてわたしは窓の外
高い木の上から見える
あの第二理科室に住んでた
青い空に吸い込まれ漂うばかり
わたしは胞子 シダに生まれた

どれ程彷徨ったのだろう
わたしの体は変わらない
思い出すあの第二理科室
シダとコケの天国だった
青い空に吹い込まれ昇り続ける
わたしは胞子 星になる



『終わりのないフェスティバル』
作詞・作曲:佐野史郎
夕暮れる四つ角に立つと
観覧車が回るよ
燃えるような赤い雲は
はじけて街をそめる
誰も気づかない道の彼方に
終わりのないフェスティバル
呼んでいるよ

夜に輝くメリーゴーランド
森の中で回るよ
月明りの中に飛行機
よぎれば星屑降る
みんな踊ってるここはパラダイス
終わりのないフェスティバル
もう帰らない

みんな踊ってるここはパラダイス
終わりのないフェスティバル
もう帰らない



『身体が邪魔』
作詞・作曲:佐野史郎
もしも僕らに 身体がなくて
どんなにでもなれるのなら
絡みあって 融けあって
風になってしまうかな

*身体なんて
あってもなくても同じこと
だけど僕らは
風じゃない

恋人たちは その国で
風にしかなれないのです
ひとたび触れてしまったのなら
身体が消えてしまいます

*繰り返し

こんな身体があるばっかりに
そんな身体に触れられない
ひとたび触れてしまったのなら
身体が消えてしまいます



『プレゼント』
作詞・作曲:佐野史郎
唇に人さし指を
押しあてる癖
それは
君に秘密が多いせい

眠りの淵からうず巻いて
流れ出る
夢の欠片
拾い集めて君へのプレゼント

その夢は見たこともない
妙な街で
水に満ちてネオンサインが
眩しかった



『遠い星』
作詞・作曲:佐野史郎
空高く敷きつめられた
うろこ雲
薄い空の碧さは
どこか遠い星のようだね

ほら まだ もう すこし
風が
冷たい
また全てが愛しくなる
ここが一番 好きな場所

歩いていたい君と
ここが一番 好きな場所

そう ここは どこか
遠い星のようだね



『君が好きだよ』
作詞・作曲:佐野史郎
はじめて僕たち出会った日のこと
君は覚えているだろうか
さわやかな風の吹く四月だったね
甘い花の香りが苦しくて

僕らはこんな歌を聴いて
目を細めて感じていたね
ずっとここにいれたなら
ずっとここでこうしていたい

それから幾たびも夏が過ぎて
せつないことだらけだったけど
空が高くなる涼しい風の頃には
別れることにも慣れっこになって

またこうして出会えるのだから
ポケットに手をつっこんで俯いていても
僕はずっとここにいるよ
ずっとここでこうしていたい

君が好きだよ
君が好きだよ
君が好きだよ
君が好きだよ



『悪いことが好き』
作詞:佐野史郎 作曲:ムッシュかまやつ
悪いことが大好きさ
他人に知られちゃもったいない
みんなと同じじゃなきゃ困る?
みんなと同じがラクチンさ
だからこうして隠してる
同じフリして隠してる

だけど隠しきれないぜ
そんなケチなものじゃない
熱くて重くて持ちきれない
見せてやろうかこいつをさ
こたえられないこいつをさ
一度知ったらやみつきだ

おいおいいいかげんにしろよ
そんなリッパなものじゃない
痛くしろとは言ってない
たかがホコリのようなもの
なんでもないぜこんなもの
だからカタチになっている

お願いだからもう少し
もう少しだけ離れていてくれ
そしたら息もできないほど
きつく抱きしめてやれるから

悪いことが大好きさ
他人に知られちゃもったいない
アイツらすぐに悪いこと
いいことに変えてしまうのさ
誰が教えてやるか
こんなに面白いことを

他人のこと気にしてるから
隠してる奴ァまあイイや
コソコソしてりゃいつの日か
いいことだってバレちまう
そんなのまっぴらオレはイヤ
悪いことが大好きさ

他人のことを気にもせず
悪くてケッコウという奴も
いいことがホント好きなのね
真実ばかりが好きなのね
そんなのまっぴらオレはイヤ
悪いことが大好きさ

お願いだからもう少し
もう少しだけ離れていてくれ
そしたら息もできないほど
きつく抱きしめてやれるから

似て非なるものとはコレよ
面白いから隠すのヨ
隠してるから面白い?
そんなことでもないの
どっちでもいいそんなこと
悪いことが大好きさ



『ロリータ』
作詞・作曲:佐野史郎
あなたは肩にかかるほどの
髪に守られて
首を傾げて瞼を閉じてる

その長い睫毛
きりりと結んだ
ちいさな唇

時折揺られて
瞬く視線
僕が観てるの知ってるんだね

あなたのそのエナメルの靴と
白い靴下は
踝を隠して膝を開かせる

ベルベットのスカートを
僕も買ってあげたい
もっと深い愛色の

時折ビクンと
はねるその腕
僕の前で眠った振りして



『素敵な午後』
作詞・作曲:佐野史郎
湖べりの街の春
君と歩くと風が笑う
こんな素敵な午後はない
幻の街へようこそ

そこの角を曲がって
ほらあそこのお店でミルクティー
こんな素敵な午後はない
懐かしい音にみんな笑う

こうしてギターを爪弾いて
クスクス笑って呟いて
こんな素敵な時はない
…またね



『こうして』
作詞・作曲:佐野史郎
地球がまっぷたつに
割れてしまえばいいと
本当にそう思っていた
忘れやしない
忘れやしない
僕を罵ったあの人も
優しくしてくれたあの人も

頭蓋骨を金槌で
叩き割ってしまおうと
ここまで振り上げていた
忘れやしない
忘れやしない
僕を罵ったあの人も
優しくしてくれたあの人も

「事故で死んだり
 睡眠薬で自殺したり
 長い間休んでいたと思っていたら
癌で死んでしまったり
そうかと思えば
生まれてきたり…
でもでも
そのはかなさを目の当たりにすると
 自分さえも確かめられずに
 死ぬことを思うだけで
 何とかそこにいた
 だからきっと
恋しくて恋しくて
君のことが
好きで好きでたまらなくなるんだ
そして
死んでしまうものを何とも思わなくなり

       生まれてくるものが
嬉しくて嬉しくて
仕方がなくなるんだ」

だからこうしているんだ
それは君のことだ
僕のことだ
ひどい奴らだけが友達なんだ

「いくらでも嘘をついてくれ
 そんなことどうでもいい
 本当のことなんか言わなくていい
 そんなものないこと知っている
 でも違う
 そうじゃない人たちがいる
スゴイ!すごいぞ
僕には出来そうもない
事実出来たためしがない
出来ないんだ
そして
こんなことを言っているようじゃ
もっと駄目だ
ホラ見ろ
グダグダ言っているうちに
地球が怒って町が壊れた
人が死んだ
犬も猫も死んだ
それはおまえのせいだ
おれのせいだ
おまけに世紀末に浮かれ出す奴らまで
野放しだ!」

だからせめて忘れないようにしよう
酷い目にあったこと
優しくされたこと
そして
恋しくて恋しくて
苦しくて仕方がなかったこと

こうして!

地球がまっぷたつに
割れてしまえばいいと
本当にそう思っていた
忘れやしない
忘れやしない
僕を罵ったあの人も
優しくしてくれたあの人も



『あわせ鏡』
作詞・作曲:佐野史郎
朝の初めの一筋が
首筋から滴り落ちると
街の屋根を伝って
放射状に広がる
鋭い針のよう

電線と絡まって
君が起きあがったなら
街は崩れてしまうよ

あわせ鏡の瞳のなかに
君の影を写しだすと
止まることのない
脈(ビート)を打ち始める
眩しいのはいつも僕

瞬く一瞬に
君との出会いを喜び
君との別れを悔やむ



『いつかねむるひまで』
作詞・作曲:佐野史郎
ねむりたいんだ
ふかく ふかく
ぼくの のぞみは
ただ それだけ

ねづみいろのそらが
とけだして
うすい あおが
のぞきだす

ねむりたいんだ
ずっと ずっと
ぼくの ねがいは
かなわない

ひのひかりが
さしこんで
くらい こころを
てらしだす

いつか
ねむる
ひまで



『しらじら』
作詞・作曲 佐野史郎
白々しさで
苦しくなってしまうんです
君の吐いた洒落なんかも
僕にとっては
君を敵に回してしまう
ようです

白々しさで
遣り切れなくなってしまうんです
君のついた嘘なんかも
僕にとっては
溜息ひとつもつかせや
しないんです

白々とした
空気を残したまま
今頃どこをさまよっているのか
君に会いたい
灰になった身体を風に
まかせても



『冬の街の夜空』
作詞・作曲:佐野史郎
冬の街の夜空は
いつも煙って
いるけど
月に照らされた
雲は
縁どり
黄金色に輝き
空気も冷たく
硬い

黒髪
月光に
濡れて
闇より
漆黒く風に翻る



『スチームシティー』
作詞・作曲:佐野史郎
スチームシティー シューシューと
我慢できずに 蒸気を吐くよ
空から 地面から 樹木から 池から
スチームシティー

スチームシティー 怒ったぜ
汚い建物が 多すぎる
芽を出せ シダにコケ 蔓草 蔦に蓮
スチームシティー

スチームシティー 崩れ落ちろ
新建材なんて 腐らせろ
熱い 蒸気で 閉じ込めて 蒸しあがれ
スチームシティー

スチームシティー 森の中で
朽ち果てた姿の 遺跡になったよ
空と 地面と 樹木と 池に囲まれた
スチームシティー
スチームシティー
スチームシティー
スチームシティー

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『冷たい紅茶のプール』
作詞・作曲:佐野史郎
ちょっと具合が悪い
体がとてもだるいの
午後の光はとても優しいし
風はそよそよ髪を撫ぜるし
グランドを走る陸上選手も
みんな私を力づけてくれるわ

ただ こうしてベンチに坐っていると
冷たい紅茶のプールの中に
レモンをたくさん浮かべて
泳ぎたいと思うの

とても切ない気分
胸がちょっと苦しい
森の中はとても涼しいし
キラキラ木洩れ陽まつげにからむし
すれ違う観光客たちも
みんな安らかな感じがするわ

ただ こうしてベンチに坐っていると
冷たい紅茶のプールの中に
レモンをたくさん浮かべて
泳ぎたいと思うの



『ねむたい魚』
作詞:佐野史郎 作曲:嶋田久作
ゆれる藻草の中にひそんで
口から泡を少し吐くわ
流れる水はゆれる鏡
尾びれを少しゆらす

あなたは来ないのかしら
背びれがかゆい
あたし眠いわ えらを広げる

よどむ緑の景色をさけ
大きくひれを打ってみるの
生温かな水は嫌い
ウロコをきれいにする

あなたは寂しいかしら
鼻腔がむずがゆい
あたし好きよ 目を閉じる

あなたは来ないのかしら
背びれがかゆい
あたし眠いわ えらを広げる

ゆれる藻草の中にひそんで
口から泡を少し吐くわ
流れる水はゆれる鏡
尾びれを少しゆらす



『浮かぶ部屋』
作詞・作曲:佐野史郎
何かに誰かに見つめられている
僕らのところに集まってきた
同じ時に気が付いて
目を見合わせるばかりで言葉も出ない

だめだよ窓を開けては
外は通りじゃないんだ
星々の散らばる浮かぶ部屋

話し始めたのは誰からだろう
お茶も飲まずに話し込んでいた
解けずにいた宇宙の不可思議
解けてしまったその時に

だめだよ窓を開けては
外は通りじゃないんだ
星々の散らばる浮かぶ部屋



『終りの恋』
作詞・作曲:佐野史郎
恋をするのはやめよう
体に悪いし
第一始まった時に
もう終りの事しか思わない
そんな恋なんて
二度と 二度と
したいとは思わない

恋をするのはやめよう
眠れないし
身体の内が一杯で爆発しそう
息を吐くばかり
そんな恋なんて
おまえが おまえが
すればいいんだ

そんな恋なんて
二度と二度としたいとは思わない
そんな恋なんて
おまえが おまえが
すればいいんだ いいんだ…



『紅いくちびる』
作詞・作曲:佐野史郎
気をつけてね あなた
そうして窓ガラスのむこうにいるからいいけれど
手を伸ばしていてもいいけれど
決して窓は開けないで

お部屋のなかは
シダでいっぱい
射し込む月あかりで
胞子はきらめき
ビロードの苔の絨毯に
私ははだかで寝そべる

気をつけてね あなた
そうして窓ガラスにおでこをつけてもいいけれど
頬をおしつけていてもいいけれど
決して窓は開けないで

お部屋のなかは
シダでいっぱい
月あかりのマントを纏い
ガラスにくちづける
ビロードの苔の絨毯を
あなたはけばだたせて微笑む

きしむ窓ガラス
わかったわキスするから
こうしてキスするから
つよく押しつけないで
窓ガラス割れたらくちびる紅く染まって
私たち消えてしまうのよ
パ・リ・ン



『水の中から』
作詞・作曲:佐野史郎
生けるような蝋人形
唇は燃えるほど紅く
胸に刺さった太い釘に
脅えて触れることもできない
ここはどこなんだろう
一人ぼっちのとても古い画廊

階段を降りて行く
階下の部屋は水のなか
そこでギターをかき鳴らす
水のむこうにみんなが見える
この苦しい密度の音を抜け
解き放たれた懐かしい場所



『サン・スーシの公園』
作詞・作曲:佐野史郎
サン・スーシの公園の
小川の水面がさざめくよ
もう僕しかいないって
枯葉舞うなかささやいて
カサカサ コソコソ ザワザワと
木々の枝さえ追いたてる

サン・スーシの公園の
お城のなかを廻ったら
私もここにいるわって
柱の陰からとび出した
チクタク コチコチ ボンボンと
置き時計さえ驚いた

かすんだ陽射しが冷えてきて
鳥の声さえ途絶えたら
雲のスクリーンに映された
二人の寄りそう
影が流れる



『台風の予感』
作詞・作曲:佐野史郎
なまあたたかな風が
肋骨の林を吹き抜ける
鼓動が高鳴って
ため息が嵐になる
好きだよ君が
大好きだよ
もうこれで会えないけれど
ざわめく木々のなかを
僕は駆けてゆくんだ

波飛沫をうける
耳の形の貝殻
瞼を閉じると
溢れ出る熱い塩水
好きだよ君が
大好きだよ
もうこれで会えないけれど
飛んでゆく雲に向かって
僕は泳いでゆくんだ

好きだよ君が
大好きだよ
もうこれで会えないけれど
ざわめく木々のなかを
僕は駆けてゆくんだ
飛んでゆく雲に向かって
僕は泳いでゆくんだ
ララララララララァラ
ラララ
ララララララララ
ララララララララァラ
ラララ
ララララララララ



『海と空』
作詞:佐野史郎 作曲:鮎川誠
君のその長い髪が
かすかに揺れるだけで
僕の回りに嵐がおこり

君のその長い睫毛の間から
浮かびあがる一粒の灯りが
苦い大きな波となる

このまま君の海の底に
飲みこまれたまま
二度と浮かびあがれなくとも
僕はかまわない

組み合わされた手と手が
絡みあったまま
渦巻いて舞いあがる

離れそうになったら
腰に手を回し抱きとめたまま
どこまでも行けばいい

このまま二人の空のむこうに
漂い続け
全てかき消されてしまっても
僕はかまわない



『天使のめざめ』
作詞・作曲:佐野史郎
ねえもう起きなよ
外はあんなに明るいよ
カーテンを開けるから
お茶を入れてよ

窓を大きく開けると
冷たい外が口のなかで
いっぱいに広がって
背中に羽根も生える

チラチラ朝の光り
睫毛に絡んで
まばたくだけで
それだけでいい



『終わりの街』
作詞・作曲:佐野史郎
シロップづけの赤いチェリー
藍色の通りに転がる
駐車違反の車の横を
甘い匂いが流れる

紺のスーツに身を包む
あなたのスカートがねじれる

「私、スカートの下は何も穿いてないのよ」

ゆっくりと走り出す車の横を
甘い匂いが渦巻く

とろける水飴のような
風にからめられ
君は消えてしまった

「抱きしめることも出来ず
触れることさえ躊躇われ
ただただ視線をからませ
口の中にまとわりつく
揺れて震える何かを
放っては捉え
捉えては放つ」

とろける水飴のような
風にからめられ
僕も消えてしまった

ここは終わりの街
知らなかった
こんなに君が好きだったなんて



『これ以上好きになれない』
作詞・作曲:佐野史郎
これ以上好きになれないくらい
君のことを好きになってしまった
そんな風に見つめてばかりいないで
手をつないで二人歩いてみようよ

いくつ言葉を重ねてみても
埋め尽くせない時がもどかしい
黙ったままでいる方が
こんなにも安らかでいられるなんて

これ以上好きになれないくらい
君のことを好きになってしまった
君のいない時は寂しいけれど
待っているから僕は平気なんだよ

時計の針は進み続け
止まることのないのが怖いんだ
君がいなけりゃこんな風に
ここにいることもなかったのに

これ以上好きになれないくらい
君のことを好きになってしまった
これ以上好きになれないくらい
君のことを好きになってしまった



『古い本』
作詞・作曲:佐野史郎
朝の光と春風の中を
古いディーゼルカーに乗り
ゴトン ゴトンと
あの町めざして走る

紙魚つき黴たこの本も
古い時間を忘れたか
パラパラ パラパラと
風に戯れお喋りをする

開いた頁はどこなのか
ギラリと光り読めないよ
急な陽射しに白い頁
文字は燃え尽き散らばってしまった

思わず閉じたらトンネルに
真っ暗クラクラと本を落とした
開けたら黒い頁
流れる景色に緑は優しい

それでもあの町に着くまでに
読んでみようとするのだけれど
どこまで繰ってみても
最後の頁が見つからない

朝の光りと春風の中を
古いディーゼルカーに乗り
ゴトン ゴトンと
あの町めざして走る



『花の頃から』
作詞・作曲:佐野史郎
膝を抱えて
狭い暗い部屋で
泣きながらこの
レコードを聴いてた
あなたが
見えるよ

どうしてだろう
花の頃から
僕は一度も
このレコードを
聴いたことがなかった

いや 聴いていたのかもしれない
でも でも 通りすぎたままで

膝を抱えて
狭い暗い部屋で
泣きながらこの
レコードを聴いてた
あなたが
見えるよ

みんなが
見えるよ

僕が
見えるよ



『セントラル アパート』
詞・曲 佐野史郎
重い雨粒
街角の古いビルと
辺りのモザイクの
色とりどりを
打ちつけ
崩していく

この十字路
もう何も残っていやしない
流れていたギターの
乾いた音も
雨に流れて
みんな消えてしまった

残された
灰色の壁の染みだけが
誰かを待ちつづけているので
泣く女のかたちになって
涙を 流す

もう降り立つこともないだろう
この交差点
もう降り立つこともないだろう
この交差点

コーヒーハウスの扉を
開けて出て行く
君の姿
横断歩道の信号を待つ
人ごみのなかに
見た気がしたけれど



『私を森へつれてって』
作詞・作曲:佐野史郎
ねえ お願い
いつか 森へ
私を 連れていって
ちょうだい

あの森では
もう時間が底をついて
昼も夜も
なくなってしまって
いるんですって

ねえ お願い
いつか 森へ
私を 連れていってv ちょうだい

あの森では
もう時間が底をついて
生も死も
なくなってしまってv いるんですって

そう死んだも同然よ
あの森へ行ったなら

あの森は
宝石の館といったところで
樹木も川も
すべて水晶
なんですって



『MG』
作詞:佐野史郎 作曲:山本恭司
繰り返される
この一瞬(ひととき)を
幾度過ごしたことだろう

珈琲一杯すする間(あいだ)に
30年が過ぎていった

扉を開けて
出てゆくあなたの
後姿を見送りながら

このメロディーを口ずさむ間(あいだ)に
30年が過ぎていった

だからまた来るよ
明日
きっと来るよ
明日
風に
乗って
燃える空を
見上げて
きらめく水の面(おもて)に
揺られて

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