佐野史郎のお気に入り


阿佐ケ谷のバー“ランボオ”

1998/1/1
photo
状況劇場時代に阿佐谷に住んでいて、そこで行く飲み屋というのが決まっていて、鈍我楽かかめやか片腕ドラゴンと呼ばれていたおやじのやっていた屋台のおでん屋、それかランボオだったんだよね。白髪で黒のタートルとスラックスのオヤジさんが一人でやってるカウンター・バーで、17年ぐらい前にカクテルが250円ぐらいだったんだよ。これなら、劇団員でも飲めるわけだよ。効率良く酔うにはもってこいだったんだ。(笑)
マキといっしょに行くと、ブリジット・フォンテーヌかカルメン・マキの「真夜中の詩集」、美輪明宏の「日本心中歌謡史」が必ずかかるんだよ。なんか、この店はなくならないだろうなという、最初から時間が止まってるようなバーだったね。
ところが、このあいだ、登山が趣味だったマスターの堀口さんが二王寺岳で亡くなったって連絡があったんだよ。

今回は、マスターが亡くなったということを知らせたかったわけだね。

そうなんだよ。シェイカーの振り方なんか、あの境地に至らないとというぐらい力が抜けてて、バーテンダーの中でも伝説になってたんだよね。
ランボオでの話しというと、1983年ごろだったか、唐(十郎)さんが芥川賞をとったばかりで、意気揚々としてるころに、ランボオでアブサンを劇団員全員が8杯ずつ飲んで酔っ払ったことがあったんだよ。それで、あんのじょう唐さんは隣の男とケンカになって、気がついたら包丁を持ってカウンターの上に立ち上がってるんだよ。(笑)

ハハハ、さすが唐さん。(笑)

もう、芝居入っちゃってるから。(笑)
マスターの堀口さんはおとなしい、いい人だったから、かわいそうだったなー。グラスを唐さんが全部ガシャーンって壊してしまって、次の日にマキが菓子折りを持って行ったんだけど、しばらくはみんな悪くて行けなかったな。(笑)

相手は一人だったの?

いや、二、三人いたんだけど、こっちも何人かいたからね。

佐野はまた得意の死んだふりをしてたんじゃないだろうな。

photo
いや、オレはなんか弱いものイジメをしてたけど。(笑)そしたら、また、マキが……

アハハ、「私が教えてやるー」ってガーンと……(笑)

ああ、その話しもしなきゃね。(笑)ネタはつきないね。
あんまり雰囲気があるから、TVドラマの「グッドラック」の時に、バーテンダーの役だったから、ランボオみたいな店がいいと言ったら、美術さんがランボオまで行って参考にしてくれたんだよね。