撮影現場、密着レポート

TBSドラマ「青い鳥」撮影裏話

永作博美と河内屋のオヤジさん

1997/12/1
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「青い鳥」のキャストはみんな上諏訪の河内屋というお蕎麦屋さんに行ってて、ここがメチャクチャ美味いんだよ。この河内屋のオヤジさんとカラオケでいっしょになったんだけど、オレが矢吹健の「あなたのブルース」を唄ったら、同じ矢吹健の「蒸発のブルース」っていうのを唄い返してくれたんだよ。これがまた上手くて、昔ムード歌謡かなんかやってたんじゃないかな。

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永作さんの歌に思わずおひねりを差し上げる佐野のマネージャー・ニカワ女史
へー、ディープ歌謡を返してくれたんだ、すごい。

後日、永作さんたちとスナック「恵」に行ったんだけど、オレは永作さんが知らないというから、タイガースの「青い鳥」やテンプターズの「エメラルドの伝説」を唄ったのよ。これは支笏湖のロケの時にも唄ったんだよね。台本には全然ないのに。

「みーずうみーにー」って。(笑)

そうそう。朝、女房を探しに湖に来て「湖に、きみは身を投げたー」って石を投げるんだけど……

縁起でもない歌を唄うもんだねー。(笑)

もう、最初からネタをばらしてるようなもんだよね。(笑)でも、「はい、本番」って言われてから、いきなり唄いはじめたんで、結局「使いましたよ、佐野さん」って押し切ってしまいました。(笑)

まったく、カメラが回ると佐野の天下だね。(笑)

animation オレも何やってんだろうって思いながら唄ってたんだけどね。長野までの移動中、GSばっかり聴いてたからかもしれない。(笑)
それで、永作さんは元・RIBONじゃない。水割りを呑みながら、隣でアイドルに戻ってNOKKOの「フレンズ」を耳元で唄ってもらったのよ。これが好かったねー。ロリ・ファンにはたまらんぜ。(笑)

「青い鳥」の佐野流物語分析(戦争責任は誰がとる?)

1997/11/14
人は無意識に物語を組み立てるものなんだなーって、ほんとに思うよ。結局「青い鳥」は、最初に赤いスポーツカーみたいな邪魔なものを町に持ち込んだのがいけないというような話しなんだな。

いったいこの人は何を言いたいんでしょう?(笑)

実は「青い鳥」は、豊川くんと貴島プロデューサーの企画なんだよ。

ああ、そうなんだ。

「ずっとあなたが好きだった」の冬彦ちゃんのときも、プロデューサーや監督、作家と物語分析をやりながら、父権不在とか、母系と母性、父性と父権の違いとか、家族とは、国家とはみたいな話しを骨格にしてストーリー作りをしていったわけだよ。
そう考えてみると、今回の「青い鳥」は責任の在りかを問う戦争責任みたいな話しじゃないかね?

また、えらいことを言い始めたね。同じ映画を観ても、ただ一人誰も観ていないエンディングを観てしまう「思い込みの佐野」の面目躍如だね。(笑)

広務(佐野)は経済のために家族や町といった集団を守ろうという立場なんだ。一方、理森(豊川悦司)は完成されない家族を想う情愛なんだな。それが、二人してお互いの立場を主張してゆずらない。しかも、どっちも「オレは悪くない、おまえが悪い」という被害者意識があるんだよ。結局、二人して女を殺しているのに。
そこは柄谷行人さんの「日本精神分析再考」(「文学界」十一月号収録)を読むと、責任不在のこの日本の現状だということが明確に分かるよ。
だから、いい悪いではなく、それをお互いに認めあえば、事情は分かりあえるはずなのに。現状を見続けるしかないと思うんだけど、心情的に許せない。いやァ、ドラマだねー。

でも、もう時代が変わってしまって、暗黙のうちの了解では分かりあえない状況になってしまっているわけだから、何か新たな手立てを考えなければならないでしょ。

昔の出雲民族はそうだったんだよ。「まあ、いいわね(いいですねではなく、まあ、どうでもいいじゃないといった意味)」の世界じゃない。いいわけないんだけどね。でも、それしか突破口がないような気がするんだよ。
今の出雲人は変えようとしているから、破綻してしまうんだ。全員がそう思えばいいんだよ。ダメ?(笑)

その旧態依然としたやり方が無効になってしまってると思うよ。でも、「まあ、いいわね」というのはボクらには聞きなれた言葉だし、地面に根付いた圧倒的な説得力があるかもね。(笑)

養老(孟司)さんの本を読んでたら、日本人の言語である漢字と平仮名を認識する脳というのは、矛盾したことが成立している実はメチャクチャな状況なんだって。「まあ、いいわね」の世界だよ。だから、日本人は他の国の人に比べて、いいかげんになってるんじゃないかな。
なにはともあれ、柄谷行人の「日本精神分析再考」を読むと「青い鳥」が見えてくるよ。

支笏湖ロケへの思い入れ

1997/11/10
「青い鳥」で支笏湖ロケがあると聞いたときに、まず思ったのが田宮二郎主演、渡辺淳一原作(無影灯)の「白い影」という金曜ドラマだよ。これは重要な話しダ!(笑)
高校生の頃よく真似をしてたんだよね。元・松江市長の娘の中村泉が山本陽子役をやってくれて、「先生、奥さまが待ってらっしゃいますわ」「気にすることはない」みたいなセリフの真似を休み時間にやってたんだよ。(笑)
同じTBSドラマの「私の運命」で医者役をやったときに、田宮二郎みたいにやろうとして、あまりに思い入れが激しくて失敗したしたぐらいだから。(笑)その「白い影」の最終回が支笏湖に入水自殺する話だったんだよ。しかも、同じ金曜ドラマで支笏湖ロケは「白い影」以来だと言われた日には、いやが応うでも盛り上がるよね。(笑)。

なんか、変な写真が何枚か撮ってあるんだけど。

animation 支笏湖で山本陽子とボートに乗るんだけど、降りるときに多発性骨髄腫の田宮二郎が「手を貸してくれないか」と言うんだよね。それを写真でやってみました。ハッハハハ。(笑)

まったく、ドラマでは豊川さんとシリアスな場面なのに、裏ではこんな能天気なことをしてたとは。(笑)

よかったなー。(笑)支笏湖、室蘭は気合が入ってたから、斧をもって妻を追いかけるシーンは「シャインニング」みたいにやらなきゃと思って、殴られた口から血を流しながら追い掛けたんだよ。ディレクターも変だなと思ってたらしいけど、本番まで斧で口を隠してて、本番で血糊をダーって口から流しながら芝居したんだよね。もう、みんなあきれてたけどね。(笑)

なんとまあ、姑息な。(笑)


アングラ劇団出身者、大集合

1997/10/24
豊川さんが渡辺えり子さんの劇団3○○にいたころの舞台は観てるの?

初舞台のイルカに乗った少年役から観てるよ。(笑)
お互いアングラ劇団出身という過去を知っている部分もあるし、なんかいっしょに芝居をしてて、他の人にはない緊張感があるね。

佐野くんがロケ現場をプライベートで撮影した写真を見ても、豊川さんはほとんど笑顔がないものね。本番と同じような顔をして写ってる。

そうなんだよね。(笑)
実は「青い鳥」の演出をやっている土井裕泰という人が山の手事情社という劇団出身で、劇団3○○出身の豊川悦司、状況劇場出身の佐野にこの間は同じ状況劇場で同期だった六平直政というメンバーで本読みしていて、アングラ劇団出身者ばっかりで、とてもTBSとは思えない現場になってしまいましたが、って話してたんだよ。(笑)
昨日は「青い鳥」の前のドラマ「恋のためらい」で元・東京乾電池の岩松了、主演の竹中直人ともうTBSの緑山スタジオは大アングラ大会だったよ。(笑)

豊川悦司の制服フェチぶりを観てほしい

1997/10/1
10月からTBSではじまるドラマ『青い鳥』の収録裏話でも聞きましょうか。面白いのは誰?

ボクのマネージャーのニカワかな。(笑)

また、そんなことを言い出す。みんなはたぶん、豊川さんの話を聞きたがると思うけど。

ああ、そうだよね。(笑)みんな呑むんだけど、豊川くんはすごくでかいから酒も強いし、足が股下90センチだからめちゃくちゃ長いよね。
彼は、JR職員の役だから制服を着るんだけど、どうしても制服フェチにしか見えないんだよ。オレが観てほしい豊川悦司というのは、そういうところだな。帽子のかぶり方とか、ひさしの角度とかまるっきり丸尾末広の世界。(笑)
だから、かなりルックスに気を使ってるナルちゃんだよね。まあ、みんなそうだけど。(笑)オレだってナルちゃんじゃないとは言わないけど。

まあ、出方が違うよね。ルックスを気にするタイプではないね。

オレなりに気にしてんだけどね。(笑)

ああ、そうか。(笑)日常生活でもその場の演出とかものの置き方とかけっこう気にしたりするでしょ。これはここに置いてないとダメだとか。そういう上辺に気を使うところが。

上辺は好きだよね。

ところが本当はそんなことどうでもよくて、実際はなんとも思ってないという。(笑)

セリフとかでも監督に「こう言いたい」とか言うんだけど、「イヤ、佐野さん、ここはそう言われるとちょっと」とか言われると、「ああ、いいですよ」ってすぐ引っ込めるもん。(笑)

こだわってるのか、こだわってないのか、全く分からない男だね。

どうしても、こうじゃなきゃ困るなんてものは、この世にはない。(笑)

とまあ断言したところで、豊川さんの話しに戻すと。

娘役の鈴木杏ちゃんは母親が再婚して父親となったオレよりも、豊川くんになつくんだけど、駅で二人で遊んでいるところがあるんだよ。これがけっこうヤバイ感じに見えるんだな。(笑)なんかロリコンに見えるんだよな。(笑)

なんか、危ない話になりそうなので、他に観てほしいところというと?

ウチが豪邸なんだけど、そのセットだけで一千万円(本当は750万だけど、TBSの貴島さん(プロデューサー)が言ってた。)かけてるところかな。TBSの緑山スタジオの一番大きなスタジオを使ってるものね。

また、ロケの話しとかは随時アップしていきましょう。

ドラマ「青い鳥」の伏線を読み解く

1997/10/17
今回はドラマ『青い鳥』の2話からの話しを聞きましょう。

柴田理森(豊川悦司)と寿司屋で思い出話をするところがあるんだけど。

ああ、ハプニング大賞で見た人もいる場面だね。

そうそう、あのシーン。
あそこで話される、理森(よしもり)と理森のアニキの敬文(たかふみ)とその親友の綿貫広務(佐野史郎)に関しては、脚本の野沢尚氏による裏ストーリーのようなものがあるんだよ。それによると、広務(ひろむ)は敬文と仲のいい理森に対する嫉妬心のようなものがあったんだな。その三角関係は、激流に取り残された理森を助けようとして敬文が亡くなってしまうことによって崩壊するんだけど、理森はそのことによって負い目をずっと感じている。ところが、その川に行けばと勧めた広務は、理森が溺れてしまうことを無意識に望んでいたと思うんだよね。きっと、理森のお兄さんと広務の間には少年の同性愛に近いような感覚があったと思う。というような解釈の上で、演じてるんだよ。
性的に未分化な時期の三角関係が成立していることを、みなさんにはまず覚えておいてほしい。

はい、分かりました、先生。(笑)

こういう台本分析というか、世界観を解釈するためのことはディレクターさんやプロデューサーさんにいつも話すし、冬彦役の『ずっとあなたが好きだった』や『誰にも言えない』でもやってたんだけど、今回はなかなか難しいね。

その裏ストーリーの伏線はどこで顕在化してくるわけ。

広務は町村かほり(夏川結衣)を暴力亭主から奪って田舎に戻ってきて、理森と再会するんだけど、そのかほりと理森が逃避行してしまうという三角関係がまた出来てしまう。広務はなにも悪いことをしていないどころか、暴力亭主からかほりを救ってやったのに、また理森によってその関係を壊されてしまうわけ。

ハプニング大賞では野際陽子さんに、また「悪い人役」だと言ってた割には、かわいそうな人役なんだね。まあ社長の御曹司で市長選に出馬しようとすること自体、権力的だからちょっと嫌味な感じはするけど、東京から田舎に帰ってきてイジメの的になったり公立中学に入ったり、ロックバンドを組むところなんて、ほとんど実生活の佐野くんを見るようで可笑しいね。

その田舎の閉塞感を突破するための突破口に、理森がなると直感的に閃いたんだけど、それが違う突破口を開いてしまったんだな。
それと、今回の主題歌はglobeなんだけど、「青い鳥」といえば私らの世代で言うとやっぱりタイガースでしょ。だからglobeはタイガースの「青い鳥」のアンサー・ソングのつもりだと思ってるよ。

曲は歌詞も小室哲哉?

そうでしょ。そういえば、小室氏を最初に観たのは20年ぐらい前だよ。新宿の厚生年金ホールで高校の同級生だった山本恭司のバンドBOW WOWを観たときの前座がギズモだったんだよ。思えば、そのギズモに居たのが小室氏だったんだな。そのあと宮沢りえ主演の映画『ぼくたちの七日間戦争』の音楽がTMネットワークだったから、いっしょに舞台挨拶をしたりしたよね。あの映画もヒットしたから、今度もヒットするといいね。(笑)

「青い鳥」は全国縦断ロケもウリなんでしょ。

信州にロケに行くときなんかは、上諏訪に向かう夏の中央高速でテンプターズの「エメラルドの伝説」とか、タイガースの「青い鳥」、スパイダースの「夕陽が泣いている」を聴いてるんだけど、気分が盛り上がるんだよね。
ああいうGSサウンドを聴きながらこのドラマを観てみるのもいいゾ!

いや、それは難しいでしょ。実際はglobeがかかってるわけだから、無理だよ。

いや、ヴィデオに録って、GS(グループ・サウンズ)をあててみるんだよ。

そんなことまでする人は、まずいないね。

そういうカルトな見方もお薦めって。(笑)オープニングはタイガースの「青い鳥」で、盛り上がってきたところで「美しき愛の掟」、理森と誌織(鈴木杏)が二人で満天の星空を見上げるところでは、やっぱり「星のプリンス」だよね。もう豊川ファンはたまんないよ、星のプリンスそのままだもん。
最初の話に戻れば、昔のディープな体験を裏に隠しもちながら、寿司屋で再会した理森と広務が話しているバックにかかっているのが、ディープ歌謡の藤本卓也作品「君が欲しい」だよ(選曲・佐野史郎)。この歌詞をよく聴いて欲しいよね。

普通、寿司屋ではかからないけどね。すさまじいなあ。