橘井堂 佐野
2006年6月24日

鳥取の植田正治写真美術館にて『つゆのひとしずく』の展覧会&シンポジウム
8月1日にリリースの、東映アニメーション制作、幻冬舎から発売の画ニメシリーズ。
佐野の『つゆのひとしずく〜植田正治の写真世界を彷徨う』も各メディアで取り扱っていただいておりますが、そのなかでも、こちらは総本山での催し!
この美術館にこもって、オリジナルプリントの数々から作品を選び出し、また、ハイビジョンでの撮影もおこなわれました。
その作品が美術館に並ぶとなると・・・ひとしおの想いがあります。
この美術館で『松江』の展覧会が開かれ、そのトークイヴェントに呼んでいただいたのが縁で生まれた『つゆのひとしずく』なのですから。
また、シュルレアリストとしての側面に焦点をあて、植田正治と小泉八雲を語っていただこうと、ブルトンの『ナジャ』の翻訳等で知られるシュルレアリスムの権威、そして近年は小泉八雲の研究者としても数々の業績をあげていらっしゃる、巌谷國士(いわやくにお)先生を迎え、『つゆのひとしずく』では多々ご協力をいただいた小泉八雲の曾孫である小泉凡さんとともにシンポジウムを開こうという趣旨であります。
詳細は下記のとおり。


植田正治写真美術館 http://www.japro.com/ueda/
文学と写真のコラボレーション特別企画展&座談会
つゆのひとしずく<小泉八雲と植田正治>
開催のご案内
――開催主旨――
「その小さな光りの玉も、やがてはそのあやしい色と、さかしまの絵ともろともに、消え失せてしまうことだろう。」―――小泉八雲、「露のひとしずく」(平井呈一訳、恒文社刊『怪談・骨董 他』所載)より
著書『知られぬ日本の面影』『怪談』等で知られる作家・小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)は、明治期の日本に見出した風土、文化、人々の情を深く愛し、それらの中に宿る霊的なものを求めて、1890年の来日から1904年東京に没するまで日本の各地を旅しました。彼をそのような思いに最も駆り立てたのは、「わけてもここは神々の国である」と賞賛した山陰、特に1年3ヶ月を過ごした松江の滞在経験であると言われています。
1902年に発表された随筆「露の一滴」の中で、書斎の窓の竹格子に震えながらかかる、一滴の露の玉に映っている景色を通して小泉八雲が描いているのは、忽然と現われては消えゆくはかない生の輝きと、自然の中に存在する限り知れない神秘を宿した小宇宙の姿といえます。
1913年鳥取県境港市に生まれ、一貫して郷土山陰を撮り続けた植田正治は、写真というメディアの探求を通して自らの世界を展開し続けました。見慣れた景色や身近な人々にカメラを向けながら、植田は現実の中に潜む、時空をも超える世界に焦点をあて、レンズに映し出された現象を捉えて構成力巧みに切り取っています。焼き付けられた印画の数々は、自らの内面を反映したものであると同時に、そこにもまたはかない生の輝きを見てとることができるといえるでしょう。
今回の展覧会では、俳優の佐野史郎氏による監督映像作品「つゆのひとしずく」のイメージをベースに構成し、小泉八雲の文章を通して植田正治の世界を読み、また、植田正治の写真を通して小泉八雲の世界を見るという新しい試みをご紹介します。


――展覧会開催概要――
展覧会名○つゆのひとしずく<小泉八雲と植田正治>
会期○平成18年7月15日(土)―10月15日(日)
開館時間○午前9時から午後5時(入館は閉館30分前まで)
休館日○毎週火曜日(祝祭日の場合は翌日)、8月15日は開館します。
会場○植田正治写真美術館 鳥取県西伯郡伯耆町須村353−3 〒689−4107 Phone.0859−39−8000
入館料○一般800円(700円) 高校生・大学生500円(400円)小学・牛学生300円(200円)
    (  )内は20名以上の団体料金です
主  催○伯耆町/財団法人植田正治写真美術財団
後  援○株式会社山陰放送/株式会社今井書店/伯耆町有線テレビジョン放送
協  力○王子製紙株式会社/東映アニメーション株式会社/株式会社幻冬舎エムディー
◆主な出品作品
「ソラリゼーション」1931年 / 「停留所の見える風景」1931年頃 / シリーズ<童暦>より 1955−70年
シリーズ<松江>より 1964−68年 / シリーズ<音のない記憶>より 1972−73年
◆同時開催/D展示室(1F) 常設展「植田正治物語―――<写真するボク>―――」
植田正治の生涯にわたる写真活動の軌跡をご紹介します出雲の風土と幻想芸術の世界を語る
座談会 つゆのひとしずく<小泉八雲と植田正治>
参加者募集のご案内
植田正治写真美術館では、今回の特別展を記念して下記の要領で座談会を開催いたします。出演者はこのたび映像作品「つゆのひとしずく」を制作監督された佐野史郎氏、小泉八曇の直系である小泉凡氏、そしてシュールリアリズムの世界に造詣の深い巌谷國士教授を招聘いたします。山陰が生んだ小泉八雲と植田正治の世界を心ゆくまで堪能していただけるひととときです。皆様のご参加を下記の要領で募集いたします。
※ 「画ニメ」『つゆのひとしずく』は8月1日に全国主要書店にて一斉に販売されます。
(製作・発売元:東映アニメーション / 販売元:幻冬舎エムディー)


――座談会開催概要――
○開催日時: 8月5日(土)午後17:15分受付開始、映像鑑賞後、座談会(20時終了予定)
○出演者(順不同): 佐野史郎氏(俳優)、小泉凡氏(小泉八雲曾孫)、 巖谷國士氏(明治学院大学教授文学部部長)
○募集人員: 定員150名
○参加費: 1,000円(1人)
○応募方法: 参加ご希望の方は、官製はがきに【参加者名(ふりがな)、年齢、職業、郵便番号・住所、電話番号】をご記入の上、までに植田正治写真美術館へお申し込みください。ハガキ一枚につき2名様までご応募できます。お二人の名前を明記してください。(※小学生以下のご参加はご遠慮ください)
○応募先: 〒689-4107 鳥取県西伯郡伯耆町須村353-3 植田正治写真美術館 座談会応募係
Tel 0859-39-8000
○締 切:7月10日(必着)
※ 応募者多数の場合は、抽選により決定させていただき、7月20日(予定)までにご招待状をお送りします。


本件に関するお問い合わせ先
植田正治写真美術館 担当:北瀬 Tel 0859-39-8000
〒689-4107 鳥取県西伯郡伯耆町須村353-3


《参考資料》
植田正治(うえだしょうじ)
1913年鳥取県生まれる。32年に上京し、オリエンタル写真学校に入学。卒業後、故郷に帰り19歳で営業写真館を開業。この頃より、写真雑誌や展覧会に次々に入選。以後精力的に作品を発表し、「少女四態」などの群像演出写真をはじめ、砂丘などを舞台に被写体をオブジェのように配置した作品の数々が国内外で高い評価を得る。54年第2回二科賞受賞。75年第25回日本写真協会賞年度賞受賞。78年文化庁創設10周年記念功労者表彰。89年第39回日本写真協会賞功労賞。95年鳥取岸本町(現伯耆町)に植田正治写真美術館開館。96年フランスより芸術文化勲章を受章。2000年7月4日死去。
小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)
1850年6月、アイルランド人の父、ギリシャ人の母との間にギリシャのレフカダで生まれる。父母の離婚後、大叔母の庇護のもとアイルランドの豊かな口承文化の中で育つ。フランス・イギリスで学んだ後、19歳で単身渡米。極貧生活を経てシンシナティ、ニューオリンズ、カリブ海のマルティニーク島でジャーナリストとして活動。1890年に特派記者として来日。松江の島根県尋常中学校、熊本第五高等中学校、帝国大学文科大学、早稲田大学で教師をしつつ山陰地方や日本の民俗を五感を開いて観察し、西洋世界に紹介した。主著は『知られぬ日本の面影』『心』『怪談』『日本―ひとつの試論―』など。1904年9月26日、東京西大久保の自宅で心臓発作のため没する。この日ハーンの愛した山桜が返り咲く。
佐野史郎(俳優)
1955年島根県松江市出身。劇団シェークスピアシアター、状況劇場を経て、86年林海象監督「夢みるように眠りたい」で初主演映画デビュー。その後も数多くのTV・映画・舞台に出演。92年、TVドラマ「ずっとあなたが好きだった」の冬彦さん役でゴールデンアロー賞をはじめその年の賞を総なめにするという社会現象を起こす。99年には初監督作品「カラオケ」が公開され、映画監督としてデビューを果たす。他にも執筆・音楽活動など他方面で活躍中。
近著「怪奇俳優の演技手帖」(岩波アクティブ新書) 最新アルバム「short movies」SPEEDSTAR MUSIC 出演映画「太陽」アレクサンドル・ソクーロフ監督
小泉凡(こいずみ ぼん)
1961年東京生まれ。成城大学大学院文学研究科博士課程前期修了。26歳の時、松江に赴任。高校教師、学芸員を経て現在、島根県立島根女子短期大学助教授、小泉八雲記念館顧問。2001年9月から2002年3月まで、セントラル・ワシントン大学交換教授。専攻は民俗学。目下、曽祖父、小泉八雲の五感を開いた生き方を、地域の子どもたちとともに追体験する「子ども塾」に力を注いでいる。主著に『民俗学者・小泉八雲』(1995)『八雲の五十四年』(共著,2003)など。論文に「境界の神―日本人の病理観から―」『日本民俗学』159(1985)、「家庭における昔話教育の意味―小泉八雲の場合―」『昔話―研究と資料26号―』(1998)、「現代社会からみたラフカディオ・ハーン〜6つの観点から〜」『英語教育と英語研究』第20号(2004)などがある。
巖谷國士(いわや くにお)
1943年東京生まれ。東京大学文学部卒、同大学院修了。現・明治学院大学教授、文学部長。シュルレアリスムを中心とするフランス文学や現代美術、メルヘン、旅、ユートピア、庭園などを専門とし、文学・美術・映画批評家、エッセイスト、紀行作家、旅行写真家、絵本作家としても活動している。著書に、『シュルレアリスムとは何か』『地中海の不思議な島』(筑摩書房)、『幻視者たち』『オリエント夢幻紀行』『澁澤龍彦考』(河出書房新社)、『封印された星』『ヨーロッパ百の庭園』(平凡社)、『スコープ少年の不思議な旅』(パロル舎)、『扉の国のチコ』(ポプラ社)ほか多数。松江と小泉八雲については『日本の不思議な宿』(中公文庫)や『ギリシア歴史・神話紀行』(河出書房新社)で、植田正治についてはコロタイプ写真集『童暦』(便利堂)で賛辞をささげている。

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