橘井堂 佐野
2006年9月27日

丹波哲郎さん大霊界へ逝く
丹波哲郎さん、お亡くなりになってしまいましたね・・・。

僕にとっての丹波さんは、やはり出会いの五社英雄監督の『226』でしょうか?
僕は青年将校、栗原中尉役。
丹波さんは真崎甚三郎大将役・・・川島義之陸軍大臣役の金子信雄さんたちにむかって青年将校たちがクーデターを起こすことを訴えるシーンが強く記憶に残っています。
撮影の合間に昔の映画の現場の話を楽しそうに金子信雄さんと話してらっしゃいました。
「・・・な、ネコちゃん」
と丹波さんが言うと、ちょっと間をおいて金子さんが・・
「ン!」と、あの独特の高い声で相づちをうつコンビが面白く、長く映画を支えて来ていらっしゃった大先輩たちに憧れの気持ちを強く抱いていました。
僕はまだ、映画デビューして3年かそこらでしたからね・・・。

ドラマ『ずっとあなたが好きだった』がヒットした時、マザコン男”冬彦”の妻、美和役の賀来千香子さんと共にママ役の野際陽子さんの演技にも注目が集まるなか、丹波さんに一言。
「陽子をヨロシク!」
『キーハンター』などのヒットドラマで丹波さんは野際さんとずっとごいっしょでしたし、まるで妹のように想ってらしたようでした。
で、丹波さんの訃報を聴くやいなや、「陽子をヨロシク!」の声がよぎり、まっさきに野際さんに電話したのも霊界からの指令でしょうか・・・?
・・・そうですよね、丹波さんは『大霊界』のお方・・・『タンバ』なんていう、カードゲームもヒットしましたっけ・・・なんて人だ!!

中学生の時『OO7は二度死ぬ』を観て、ショーン・コネリーを圧倒する演技に、日本人映画俳優の頼もしさを感じていました。
あのころ好きだった俳優は、マカロニ・ウエスタンのクリント・イーストウッドもさることながら、悪役のリーバン・クリーフ!
アラン・ドロンやジャン・ポール・ベルモントは当たり前すぎるかもしれませんが、大好きでした。
スティーヴ・マックイーンやジェームス・コバーンなんかもね・・・。
そんななかに、丹波さんはいたのですよ!
中学生の僕にとって、丹波さんは、まさに“映画スター”そのものでした。

しかし、なんといっても、丹波さんといえば、昨年亡くなられた石井輝男監督の右腕!
『網走番外地』をはじめとして、石井監督の作品には欠かせない存在だった丹波哲郎!!!
高倉健さん、吉田輝男さんと並び、もっとも信頼出来る俳優の中のひとりとして、文句をいわず、ひたすら言われたことを黙々と演じる丹波さんをいつもほめていらっしゃいましたっけ・・・。
石井組に参加させていただけたことで、ますます丹波さんに親近感を感じていました。

最後にごいっしょさせていただいたのは2001年のNHKのスペシャルドラマ『僕は明日18になる』でした。
僕は電気工事の作業員役で、丹波さんは電気工事に行った先の老人の役。
伝説どおり、台詞は覚えていらっしゃらず、「この役はいい人か、悪い人か」「怒ってるのか、嬉しいのか」・・・といったことを、本当に監督に訊いていて、おもわず嬉しくなったのを覚えてます。
・・・いや、丹波さんだからできること・・・僕がそんな真似をしたら、大失敗してしまいます!

大霊界で、丹波さんと石井監督、次なる作品の相談でもするのかな?

ご冥福をお祈り申しあげます。

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