橘井堂 佐野
2006年11月30日

実相寺昭雄、黒木和雄、今村昌平・・・巨星あいついで逝ってしまった今年
11月28日、実相寺昭雄監督が癌によりご逝去なさったそうです。
体調を崩されていた・・・とはきいておりましたが・・・。
今年は、黒木和雄監督もお亡くなりになり、そのことに触れずにいたのは、あまりにも次々と偉大な先達たちが逝ってしまわれるので、想いを記すのにも、なにか決心しなければ綴れなかったのです。
久世光彦さんも他界なさったばかりでしたし・・・。

実相寺監督とは「帝都物語」ではじめてごいっしょさせていただきました。 共演の嶋田久作とは二十歳の頃からの親友ですし、ともに映画の世界に足を踏み入れたばかりで、脚本をこの時担当した林海象監督ともども、あこがれの実相寺組でお仕事をさせていただける歓びでいっぱいでした。
「帝都物語」はよく読んでいましたし、原作の荒俣宏さんのこともラヴクラフトの翻訳で高校生のころからその名を知っていて、どんな人だろう・・・?と興味津々でした。
そんな、幻想怪奇の世界にどっぷりひたっていたなか、実相寺監督は現場でよく「金城が、金城が・・・」と、ウルトラQ、ウルトラマンの生みの親であり、チーフライターだった 金城哲夫さんのことを思い返してらっしゃったのが印象に残っています。
あれから20年が経ち、僕はウルトラの世界のお仕事にどれほど関わらせていただいたことでしょう・・・ドラマ「私が愛したウルトラセブン」では、金城哲夫役もやらせていただきました。金城さんと同僚の沖縄出身の上原正三さんはお元気で新作の(というか、ウルトラシリーズの原点)「WOO」ではバリバリと執筆なさって指揮をとっていらっしゃいますが、いっしょに映画を・・・と企画を相談させていただいたこともありましたし、リメイクの「ウルトラQ」や「ウルトラマンマックス」のナレーション等、映画を始めてから、そこにはいつもウルトラの世界がありました。
実相寺昭雄・・・という監督は、そんな、円谷プロ、ウルトラの世界で、ひときわ異彩を放っていた監督です。
怪奇大作戦の「京都買います」は大好きな作品です。
劇場公開用のシナリオがあるので、いつかリメイクしたい・・・ともおっしゃっていましたっけ・・・。
・・・実は、来年早々、ごいっしょできるかもしれない・・・とも思っていたのですが・・・残念でなりません。

黒木和雄監督とは「帝都物語」の直後に入った作品「TOMORROW/明日」でごいっしょさせていただきました。井上光晴さんの原作で、長崎に原爆が落ちる前の日を描いた作品でした。
戦時下の長崎の人々の営みを丁寧に描いた作品で、劇中に小津安二郎の「父ありき」を流したり、松竹大船撮影所で撮影したり・・・と、小津組に対するオマージュもあったと感じています。
僕自身も、そのことを強く意識していましたし、脚本を担当していた竹内銃一郎氏との、その後の舞台での活動を考えると、黒木監督との出会いもとても大きなものでした。
映画を始めたころの、これらの作品での自身を観ると、嫉妬心すらめばえます。

今村昌平監督とは、映画でごいっしょさせていただくことはできませんでしたが、数年前、NHKの小津安二郎生誕百周年記念の特別番組で小津組の助監督時代の体験談をきかせていただく機会に恵まれました。
「人間蒸発」はじめ、今村作品の容赦のない作品に触れる度、表現者としてのど元に刃をつきつけられる想いがします。
いっしょに「うなぎ」を食べたこと、お身体には悪かったかもしれませんが、おみやげに生姜糖をさしあげたら、とてもうれしそうに微笑んでくださったこと、忘れません。

どうやら、円谷、小津、といった世界をスタートとして、映画を教わりはじめたことが、とてつもなく大きなことのような気がします。

ゴジラ、東京物語・・・そこには通じるものが、はっきりあると思うのです。

みなさま、やすらかに・・・。

実相寺監督は、M78星雲で、金城さんや円谷監督たちと、新作の企画会議をすすめてくださいね! そして、この地球に届けてください!!

合掌。

目次ヘモドル