橘井堂 佐野
2000年2月24日

アイルランド・小泉八雲紀行1

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★ダブリン市内のジェイムス・ジョイスの銅像と。
3月5日放送のBS2の「地球に好奇心」で小泉八雲のアイルランド時代をさぐりに行ったんだよね。

そもそも、マネージャーの渡邊氏が去年の秋に、「そろそろ外国旅行の仕事を入れたいね」と言いはじめて、真希に相談したら「アイルランドに行きたい」と言ってたんだよね。スタイリストでマキの幼なじみのスミちゃんと4人で、それまでもアラスカやらタイやら旅行した仕事が何本かあったからね。
で、なんでアイルランドなんだろうって、こっちは「ああ、アイルランドねー……」なんて言って、ポカーンとしてたな。(笑)
でもそれは成立しなかったので、その代わりにスケジュールが空いた11月に、韓国へ橘井堂の社員旅行に行ったわけですよ。ソウルはありきたりだから、よりディープなプサンにしたんだけど(佐野はソウルとプサンがすぐ近くだと思っていた)、まあ楽しかったですよ。
そしたら12月になって「地球に好奇心」でアイルランドに行かないかという話が来たという、相変わらずの出会い頭の運の良さだよ。

小泉八雲に関しては、地元の松江にいた人でもあるし、以前TVの取材でアメリカ時代の八雲の取材もしたことがあるね。

山陰放送の開局30周年記念番組で7年前に取材に行ったことがあるから、文筆 の仕事を始めてからの下調べはしてあったんだけど、アイルランド時代が小泉八雲にとってどれほど重要だったのかということまでは分かっていなかったね。
これまでは、生まれ故郷で2歳までいたギリシャのレフカダ島にラフカディオ・ハーン〔小泉八雲)の原点があると言われてたんだ。だから、アイルランドにハーンの足跡を訪ねるという企画は、NHKでもなかなか通らなかったらしいね。


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★アイルランドのマックスロード? に たたずむ松本隆?
ちがう!これはトラモアという海水浴場の浜辺のあるブレナンおばさんの別荘で、そ のままB&B(簡易ホテル)になってるの! そこの居間で。

最初、放送日が2月27日の日曜日の予定で、「特命リサーチ200X」の裏だから出演は難しいんじゃないかって言われてたの。でも、日本テレビもNHKもわりとあっさり問題なしということでOKが出たんだよね。
放送日も結局3月5日に延ばしてもらえて、バッティングしなくなったし。
そもそもこの企画は、プロデューサーの方が、小泉八雲の「怪談」の「日まわり」や「蓬莱」あたりの原イメージがアイルランドにあるのではないかと考えたことから始まったんだよね。
僕の興味としては、平井呈一さんが『怪談』(岩波文庫)の解説で、ハーンが敬愛したブルワー・リットン卿の「幽霊屋敷」(創元推理文庫・怪奇小説傑作集1所収)や、ゴーチエ、ポー、レ・ファニュなんかをあげていたのが大きいんだけど。

ダンセイニもアイルランドだし、「吸血鬼カーミラ」のレ・ファニュ、「吸血鬼ドラ キュラ」のブラム・ストーカーもダブリン生まれなんだね。

ダンセイニは本国でそんなに評価されてなかったなあ。ラブクラフトなんかも、平井さんは流れの中できちんと八雲の解説で述べているし、八雲も同時代の人間として、知らなかったのかなあ?・・・ちょっと後か、ラブクラフトは・・・。
そんなこんなで、年譜を作っもらったら、エドガー・ポーの死んだ翌年にハーンが生まれてるんだよね。ホーレス・ウォルポール、リットン卿、レ・ファニュが先で、ダンセイニがハーンと重なってるね。そう思うと、やはりラヴクラフトはちょっと新しい。
ハーンは東京帝国大学のテキストに「幽霊屋敷」やレ・ファニュの「サイラス叔父さん」を使ってるんだよね。レ・ファニュは「吸血鬼カーミラ」で知られているけど、実は当時非常にアカデミック(?)な大作家なんだよ。「嵐が丘」も「サイラス叔父さん」の焼き直しだと言われているぐらいの。

そうした西欧の怪奇幻想の系譜の流れで小泉八雲をとらえることは、あまりなかったような気がするね。


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★ハーンの父チャールズの末裔で、小泉時、凡さんの遠縁にあたるアン・ポータさんと。 。
調べていくうちに幻想文学体系の中での小泉八雲、すなわちラフカディオ・ハーンにすごく興味が湧いてきたんだよ。それは番組の趣旨とはちょっと違ってるかもしれないんだけど。(笑)
ハーンのお母さんはシテール島(アンゲロプロス監督の「シテール島への旅」だよ)の人で、イギリスから来ていた軍人のお父さんと出会って、レフカダ島で生まれたのがハーンなんだ。
ハーンが2歳のころにお父さんの故郷のダブリンに行くんだけど、お母さんは英語 も喋れないし、ハーンをおいてレフカダ島に帰ってしまうんだね。お父さんも初恋の女の人とインドに行っちゃうし。(笑)もう、大変なんだよ。

なんか、暗く切ない幼年時代をアイルランドで送ったという感じがしてきた。

だから、自分であまり記してないからアイルランド時代の記述が非常に少ないんだよ。
それと宗教の問題があって、日本では僕ら、ギリシャ正教や、プロテスタント、ローマ・カソリックの違いなんてよく分からないじゃない。生活に密着してないし。まあ、それも取材をしていくうちにいろいろ分かってきたんだけどね。
宗教的にはアイルランドには土着のドルイド教とか、マニ教があったり、それに聖パトリックがキリスト教を持ち込んで、神仏昆合みたいに合体しゃちゃうんだよ。
敬虔なカソリックと、イギリスだから16世紀以降の繁栄のプロテスタントが血みどろの北アイルランド宗教戦争になるわけだけど、日本にいては分からないよね。

アイルランドって人口も350万人くらいだから、小さい国だね。言語は何なの?


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★アイルランドの典型的な朝食。
ケルトのゲール語が公用語みたいだけど、ほとんどは英語だよね。
バージン・エアラインで行きはビジネス、帰りはファーストに乗せてもらって、良 かったなー。ファーストはエステまでついてるんだよね。(笑)食事もレストランみたいになっていて、好きなときに食べていいんだよ。前とシステムが変ったみたい。
アイルランドのギネスは最高だったね。あれのために行ってもいいくらいだよ。あとは、ジャガイモと羊の肉、野菜スープが美味しかった。あんまりバリエーションはなくて地味だし、どこにいっても同じようなものしか出てこないんだけど、美味しかった。

じゃあ、次回はもう少し具体的な話しを聞いていきましょう。

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