橘井堂 佐野
2018年9月17日

「現場者(げんばもん)300の顔を持つ男」大杉漣
大杉漣さんの奥様から、漣さんが50代に上梓された「現場者(げんばもん)300の顔を持つ男」を送っていただきました。
今回、文庫化されるにあたり、あとがきを奥様が綴っていらっしゃり、お二人の、ご家族の愛情の深さをひしひしと感じさせられました。

なんども共演してきた我々なので、それこそ現場で想い返されることはたくさんあるけれど、東日本大震災の時、連続ドラマでご一緒させていただいていて、その時、真っ先に奥様のことをお話しなさっていたことが強く心に残っています。
その内容は、さすがにこちらもちょっと恥ずかしくなってしまうような、ここには書けないようなことなので、残念だけれど、その愛情の深さを思い知らされた現場でありました。

漣さんは年齢は僕よりちょっとだけ上だけれど、劇団は転形劇場と状況劇場、映画デビューは高橋伴明監督と林海象監督と、重なる部分も多いように思いますし、演じる役所も近かったような気もします。
ただ、僕も漣さんと同じようにがむしゃらに仕事をしてきたように思っていたけれど、漣さんとは現場への入れ込み方が桁違いだったことも、この本を読んで思い知らされました。

二人とも音楽が好きで、ライブも続けていたのもシンパシーを感じるところでした。
漣&史郎というフォークデュオを1日だけ組み、吉祥寺音楽祭で一緒に演奏したこともあったなあ。

しょっちゅう間違い電話がかかってきたし。
携帯電話、どういう設定にしていたのか、謎。

「現場者」、漣さんが若い頃に苦悩していた想いを綴った、残されたノートの文章を奥様がいくつか紹介なさっているけれど、漣さんが偉大なる詩人であったこともわかりました。

言葉にできないことを言葉にしたものが「詩」であるとだれかが言っていたけれど、漣さんは、俳優という身体の詩人であったことも知りました。
僕も、そうありたいと思っているけれど、何も「詩」は、崇高なもの・・・という訳でもないと思うので、「現場者」の身体を忘れないようにと、「詩」となることを夢見て現場に向かいます。

漣さん、奥様、ご家族の皆様、素晴らしいご著書を、本当にありがとうございました。

橘井堂