橘井堂／シンシナティの朗読ツアー

橘井堂　佐野
2019年11月12日

シンシナティの朗読ツアー

ニューヨーク、ジャパンソサエティでの公演、大盛況ではあったけど、僕自身はまったく納得のいくものではありませんでした。
悶々とした想いを抱え、けれど、心機一転！と、シンシナティへ。

シンシナティへは、26年前、地元、山陰放送の開局30周年記念番組で訪れた以来。
やはり小泉八雲関連の番組で、ラフカディオ・ハーンのアメリカ時代の暮らしや作品を追っての構成でした。

シンシナティはハーンが新聞記者として、文筆家としてスタートした地。
「鞣革工場殺人事件」など、猟奇的な事件の記事は、読者を震え上がらせ、初期の頃から「怪談」を得意としていた作家だったのでした。

今回の公演では、そうした事件現場には行きませんでしたが、ニューヨークではカットしていた、ハーンの最初の黒人の奥さん〜とはいえ、黒人との婚姻は法律上、当時は禁じられていたのですが〜から聞いたシンシナティ界隈の怪談話も盛り込み、臨場感は抜群！
ご当地の地名や番地が出てくると、地元の方々には、そりゃ、想像力も膨らもうというものでしょう！

作品中、「西五番街」で起きた怪談話が出てくるのですが、公演を終えてホテルに戻ってきたら、なんと！ホテルが、その西五番街、その地に！
ま、よくあることですが。

ハーンが最初に勤めた新聞社、シンシナティインクワイヤラー社。26年前にあったその地は、ホテルになっておりました。

かつては栄えた川沿いの大都市も、今はかなり寂れた様子で、治安も悪いようですが、それでも、伝統のある街の誇りとでもいうようなものが漂っていて好きでした。
古い建物を残そうという姿勢も好き。
ちょうど日曜日で、ユダヤ教寺院の礼拝前を覗かせていただきましたが、小さなお子さん連れた家族が、おめかしして教会に集う姿は美しいなと思いました。
やはり、宗教、神話は必要なのかも。
人は弱いですしね。
俺は多分、一番弱い。

ハーンも通っていただろうという、1860年代からあるというレストラン、アーノルドは良かったな。
元気なウエイトレスのおねえちゃんや、マダム、おっさんたちも地元感満載！で。
地元のビールも美味しかった〜！

シンシナティ・レッズの球場やミュージアムにも行き、ちょいと大リーグの雰囲気だけでも味わえました。広島カープのロゴは、レッズからなんですね！
さて、シンシナティでは、ハーンの弟のジェイムズが兄の後を追って、アメリカへ渡ってきたのですが、なんと、その子孫が大集合！
お互い初対面の親族もいて、なんとも感動的な出会いでした。
ディナーに私もご招待いただき、感動のお裾分けをいただきました。

11月27日、シンシナティ・アート・ミュージアムにての公演は、ニューヨークではカットしていた、ハーンの奥さんマティから聞いた「奇妙な話」や、ニューオリンズの巨匠、今年他界したドクター・ジョンが、ハーンの作品「最後のヴードゥー教徒」の祈祷師の実話からその名を採ったという作品を加えてのパフォーマンス。
ニューヨークの失敗を糧に、この日は、おそらくこれまでで最高の出来でした。

きっとハーン一族が来てくださったので、ハーンが力を与えてくださったのだと思います。

シンシナティでは、デトロイトの領事館ご夫妻など、近隣の日本人の要人の方々からディナーにご招待いただいたりと、日本とアメリカの歴史のことを強く意識する公演ともなりました。
デトロイト領事館ご夫妻とは、かなり突っ込んだ日本国の話もでき、大変有意義でした。

何にも見ることのない街〜なんて聞いてたけど、古い伝統の空気が流れる、とても好きな街でした。

あ！
シンシナティ名物、Chilliだけは、ダメな方々もいたみたい^^;
給食のスパゲティにミートソースとチーズをトッピングしただけのようなものなんだけど、僕は好きでしたよ。
Corneyとかいう、パンに挟んだやつもね。

さ、最終公演は、ニューオリンズです！